2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K16172
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
岡部 匡裕 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (70595272)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポドサイト / ポドサイト傷害 / 慢性腎臓病 / EGR-1 / 糸球体疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではヒト糸球体疾患において,早期ポドサイト傷害マーカーとしてのEGR-1の有用性を見出すことを目的とした. 腎生検で糸球体疾患と診断された患者102症例において,ポドサイトEGR-1発現率が尿蛋白量,尿nephrinおよびpodocin mRNA量と正相関,糸球体podocin発現と逆相関しており,糸球体疾患においてポドサイトのEGR-1発現の程度とポドサイト傷害の程度ならびに脱落ポドサイトの程度に関連があることが示唆された.確立されたヒトのポドサイト傷害の染色マーカーは現在のところ存在しないが,EGR-1がヒトのポドサイト傷害の染色マーカーになり得ると考えられた. ループス腎炎(LN)はポドサイトEGR-1発現率が高い疾患であったが,同コホートではLN症例が5例しか含まれておらず,新たに後ろ向き観察研究として,LN症例 64例を用い,ポドサイトEGR-1陽性糸球体率と臨床病理所見との関連を検討した.ポドサイトEGR-1陽性糸球体率はSLEDAIスコアおよび1日尿蛋白量と正相関し,推算糸球体濾過量と逆相関した.組織解析では,ポドサイトEGR-1陽性糸球体率は,IV型で他の組織型より有意に高く,また細胞性/線維細胞性半月体糸球体率と相関したが, 硬化糸球体率や尿細管間質障害度とは相関しなかった.LNの活動性が増すほどポドサイト傷害も強くなっていることが示唆された. また,前述のコホートを用いた検討でネフローゼ症候群を呈する微小変化型ネフローゼ症候群(MCD)と巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)でポドサイトEGR-1発現の程度が異なっていたため,新たにネフローゼ症候群を呈するMCD症例36例とFSGS症例9例を含むコホートで比較したところ,FSGS群で有意にポドサイトEGR-1発現率が上昇していた.FSGSはMCDよりポドサイトに強い傷害が加わっていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた研究を実施し,結果が出ている.研究遂行にあたり障壁になるような事象もなく,本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
ポドサイトのEGR-1発現が治療によって減少するか,IgA腎症症例の治療前後で腎生検を施行された症例に対し,ポドサイトのEGR-1発現を前後比較する. また膜性腎症やIgA腎症において,ポドサイトのEGR-1発現率と腎予後との関連を検討する.
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Causes of Carryover |
免疫染色に必要な抗体や染色キットなどを前年度の残余を用いて施行できたため,組織染色費用などに想定されたほどの使用がなかった.次年度以降の研究ではこの部分の経費が必要となってくる見込みである.また,研究成果が蓄積されてきており,学会発表に必要となる経費や論文化に必要となる経費も今後さらに必要となってくると考えられることから,次年度以降に使用していく予定である.
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Research Products
(3 results)