2021 Fiscal Year Research-status Report
腎移植患者における血清アディポネクチンおよびエクソソームと血管石灰化との関連
Project/Area Number |
21K16175
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
野村 佳苗 金沢医科大学, 医学部, 助教 (60835875)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アディポネクチン / エクソソーム / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アディポネクチンは抗動脈硬化、抗糖尿病作用などを有する。近年、アディポネクチンが血管内皮細胞を含め遠隔細胞に作用してエクソソーム産生を起こす事が明らかになってきた。本研究では、腎不全患者および腎移植患者におけるアディポネクチンおよびエクソソームが動脈硬化形成に果たす役割を明らかにする。 本研究では、分子量の異なるアディポネクチンが動脈硬化形成に果たす役割を、腎不全症例および腎移植患者による臨床データと、細胞実験を用いて明らかにする計画である。 本年度は,エクソソームの影響を細胞培養を用いて検討した。アディポネクチンの刺激による、尿細管上皮細胞、血管上皮細胞等の培養細胞の変化を、mRNA解析を中心に行った。また,培養上清を収集して超遠心法やポリマー沈殿法などのエクソソームの分離の方法の検討を進めている。また、実際の動脈硬化に向けての相互作用を念頭に,脂肪細胞と血管内皮細胞など予想される組み合わせでの共培養法についても検討を進めた。標的細胞となる血管内皮細胞の変化を,文献的情報を元に,候補分子をreal time PCRで検討した。 また,腎不全患者および腎移植患者におけるアディポネクチンおよびエクソソームが動脈硬化形成に果たす役割に関しても検討を進めた。血清アディポネクチン分画(高・中・低分子量アディポネクチン)について、ELISAキットを用いた測定のための候補症例の検討を進めた。動脈硬化の評価には,新たに画像解析ソフトの導入を行い,評価の実行可能性について検討を進め,概ね解析可能である所見を得た。腎移植症例においては,筋内の脂肪を表すと考えられるintramuscular adipose tissue content (IMAC)が,高分子アディポネクチンと負の相関があることを示しており,動脈硬化との関連を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,エクソソームの影響を、細胞培養を用いて検討した。アディポネクチンの刺激により、脂肪細胞、尿細管上皮細胞、血管上皮細胞の培養細胞の変化をmRNAで評価するとともに,発現するエクソソーム解析の条件設定を進めた。概ね計画通りの進行である。 また,ヒトの検討に関しても,症例の選定,解析法の確立,プレリミナリーな解析を進めて,一定の方向性を見出すことができた。次年度以降,得られた検体の解析や追加の実験および検体収集を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,現在得られている個々の細胞の解析をさらに進める。特に,アディポネクチン受容体であるAdipoR1と AdipoR2に対するアゴニストである、AdipoRon による影響を中心に評価する。また,文献的な知見も参考に,脂肪細胞と血管内皮細胞を中心に相互の関係をエクソソームを中心に機序解明を進める。さらに,既存のデータベースを用いた動脈硬化とエクソソーム,アディポネクチンとエクソームに関する影響の解析も進める。 ヒト解析に関しては,新たに構築した動脈硬化の画像解析を進め,動脈硬化のより全身的な評価として現在進めているアディポネクチンとの関係を検討する。特に,腹部CTスキャンにおいて、各スライス毎に大動脈横断面積に対し石灰化が占める部位をパーセンテージで表すaortic calcification area index(ACAI)等を半自動で解析するシステムを構築し,より多量の画像解析を進め,他のデータとの関連を検討する事に注力する。
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Causes of Carryover |
物品購入も概ね初年度の計画通り進める事ができた。消耗品の効率的な使用により,年度末の段階で最終的に5万円弱の残金が生じたが,研究は継続的に進めており,次年度早期から必要な消耗品も有り,有効に活用していく予定である。
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