2022 Fiscal Year Research-status Report
腎移植患者における血清アディポネクチンおよびエクソソームと血管石灰化との関連
Project/Area Number |
21K16175
|
Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
野村 佳苗 金沢医科大学, 医学部, 助教 (60835875)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アディポネクチン / エクソソーム / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アディポネクチンは抗動脈硬化,抗糖尿病作用などを有する。近年,アディポネクチンが血管内皮細胞を含め遠隔細胞に作用してエクソソーム産生を起こす事が明らかになってきた。本研究では,分子量の異なるアディポネクチンおよびエクソソームが動脈硬化形成に果たす役割を腎不全症例および腎移植患者による臨床データと細胞実験を用いて明らかにする計画である。 本年度は,臨床データを中心に検討を進めた。動脈硬化の進行を3次元的に解析し,定量的な評価を行うことを主体に進めた。倫理審査委員会の承認を受け,28例(女性61%)を対照に,腹部単純CTより動脈硬化の動脈硬化病変と大動脈の体積を3次元的に測定した。 対象者の初回CT撮像時の年齢は,中央値76歳(四分位71,86歳)であり,観察期間は,中央値858日(四分位406,1213日)であった。観察初めの大動脈石灰化体積の中央値は7.4 cm2 (四分位 4.4, 13.5)であり,大動脈の体積は,中央値は76.0 cm2 (四分位 71.5,86.0)であった。一方,最終観察時の大動脈石灰化体積の中央値は10.0cm2 (四分位 6.1, 17.5観察初めの大動脈の体積の中央値は86.7 cm2 (四分位 72.0, 127.9)であった。大動脈体積に占める動脈硬化病変の体積の割合は観察開始時で中央値は7.0% (四分位 4.7, 13.5)であった。また,観察期間内での脈硬化の進行は,1年当たり中央値で0.7% (四分位 0.4, 1.3)であった。 また,アディポネクチンの測定では,高分子,中分子および低分子アディポネクチンは,初回中央値でそれぞれ,45.1, 18.5, 35.8%であり,年率の変化は,それぞれ1.5, 0.6, -1.3%であった。 現在,各アディポネクチンと動脈硬化の進展との連関について解析を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,臨床データ,特に画像解析とアディポネクチンの関係について検討を進めた。 倫理審査を受けた上で,観察期間の中央値で858日の腹部CT画像を収集し,詳細改正を行った。当初二次元の各スライス毎に大動脈横断面積に対し石灰化が占める部位をパーセンテージで表すaortic calcification area index(ACAI)で検討する予定であったが,更に進めて,3次元の体積として測定するシステムを確立し,収集した症例の解析を行った。動脈硬化の進展を3次元的に可視化できるため,動脈硬化の進展に関して新たな解析の可能性も現れている(詳細な画像の収集や3次元的な進展の解析について検討を進めている)。アディポネクチンのデータとの関連について検討を進めている。 初年度主体的に行った細胞実験に関しては,刺激実験などを進めている。培養条件を変えながら結果を確認しており,再現性を検証している。
|
Strategy for Future Research Activity |
臨床データの解析については,当初の予定以上に解析技術の進展が見られ,次年度もさらなるデータの収集と解析を進める。筋肉に関しても3次元の解析が可能であり,CT地による筋の質的変化の評価も可能であることが数例の検討で明らかになった。最終年度は本解析を更に進め臨床的意義を明らかにする。 また,細胞実験,エクスソームや AdipoR2に対するアゴニストである,AdipoRon による影響も最終年度に成果を示せるように検討を進める。
|
Causes of Carryover |
本年度は,細胞実験の条件設定や刺激実験のプレリミナリーな検討に時間を要した。また,画像解析や臨床データ解析に時間を要した。また,画像解析に関しては現有の機器を利用して,効率的に研究を進める事ができた。アディポネクチンの測定などを効率的に行うことにより,当初の予算を要せずに効率的な研究推進が可能であったため,残額が生じた。次年度は,細胞実験の推進を行う。データの再現性などを得るのに今回の予算を有効に活用する予定である。
|