2021 Fiscal Year Research-status Report
Discovery and Selection of Urinary Protein Biomarkers for Diabetic Kidney Injuries Detectable before Microalbuminuria
Project/Area Number |
21K16182
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
柳田 憲吾 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (10789811)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 尿 / バイオマーカー / 糖尿病 / 腎障害 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病の一つである糖尿病は自覚症状に乏しく、進行していくことが多い。糖尿病では腎障害が起こり易く、その診断は微量アルブミン尿でなされるが、最悪の場合、透析医療などが必要になる。糖尿病による腎障害への進行を阻止するには、腎障害を早期に発見し、生活習慣の改善や適切な医療介入が必要である。そのため、現行で行われている微量アルブミン尿より早く、腎障害の予兆、軽微な障害を検出可能なバイオマーカーの開発が期待されている。本研究では侵襲性が少ない尿を用いて、質量分析装置による定量プロテオミクスで経時的に採取した糖尿病患者の尿中タンパク質を網羅的に解析し、微量アルブミンより早期に検出可能な糖尿病性腎障害マーカーの探索と獲得を目的とした。 2021年度は尿中の微量アルブミンより早期に検出可能な糖尿病性腎障害マーカーの候補タンパク質を選定するため、健常者尿と微量アルブミン尿陰性と診断された糖尿病患者尿と陽性と診断された糖尿病患者尿を用いて、質量分析装置による定量プロテオミクスを行った。その結果、健常者尿中のタンパク質を基準として、糖尿病患者尿で微量アルブミンと相関する尿タンパク質群が選定された。現在、選定された尿タンパク質群のうち、微量アルブミン尿より早期に検出可能な尿タンパク質を糖尿病性腎障害マーカーの候補とし、データ整理を行い、精度と感度の良いマーカー探索を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は質量分析装置を用いて健常者尿316例、微量アルブミン尿陰性と診断された糖尿病患者尿418例、陽性と判断された糖尿病性腎症になった患者尿181例の尿中タンパク質を解析した。その中から健常者尿に比して微量アルブミン尿陰性と診断された糖尿病患者尿でタンパク質量が増加した尿タンパク質群を選定した。さらに、選定された尿タンパク質群の中から、微量アルブミン尿陰性と診断された糖尿病患者尿に比して微量アルブミン尿陽性と診断された糖尿病患者尿で増加している尿タンパク質を選定し、尿アルブミン量と正の相関が高いタンパク質を微量アルブミン尿より早期に検出可能な糖尿病性腎障害マーカーの候補とした。 質量分析装置による解析で選定された微量アルブミン尿より早期に検出可能な糖尿病性腎障害マーカー候補タンパク質のうち、抗体が入手可能であった例については抗体を用いた表面プラスモン共鳴(SPR)法で尿検体のタンパク質定量を行って、質量分析装置による解析で選定結果をより多くの尿検体を用いて検証する研究まで進めることができた。 このことから、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度では2021年度で選定された尿中アルブミン量と相関し、微量アルブミン尿より早期に腎障害の発症を検出可能なマーカーとなる尿タンパク質について、表面プラスモン共鳴(SPR)法やELISA法など抗体を基盤とした実験により多検体の尿を解析し、もっとも鋭敏で、精度の高いマーカータンパク質を選定する。 尿検体の収集数は前年度の申請時には75,000検体だったが、現在は、約100,000検体を保持している。糖尿病から糖尿病性腎症に進行した患者の尿検体をその中から選択し、多検体の尿を用いたSPR法、ELISA法などにより解析し、微量アルブミン尿より早期に糖尿病性腎障害の発症を検出可能なマーカーの検証を行う。その中で、質量分析装置による解析では、尿中タンパク質の存在形態(アミノ酸配列など)を解明し、タンパク質定量のゴールドスタンダード法であるELISA法とSPR法の比較から、SPR法の妥当性についても検討する予定である。 2023年度は2021年度で得られた質量分析装置による定量プロテオミクスのデータと2022年度で得られた抗体を基盤とした実験によるデータを比較、解析する。その際、データが十分でない、または、十分に検討されていなかった箇所については追加実験を行う予定である。得られたすべての結果をまとめ、成果の発表を学会や学術誌で行う。
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