2021 Fiscal Year Research-status Report
Effect of DPP4 inhibitor on cisplatin cytotoxicity to the cancer and kidney
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21K16184
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
岩倉 考政 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (20771091)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DPP4阻害薬 / シスプラチン / 急性腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
Dipeptidyl peptidase-4(DPP-4)阻害薬は糖尿病治療薬として臨床で使用されている薬剤だが、動物実験および担癌患者における後ろ向き研究にてDPP-4阻害薬がシスプラチンによる腎障害を軽減する可能性を過去に報告した。しかし、その保護効果の機序については十分に解明されていない。 低マグネシウム(Mg)血症は担癌患者ではしばしばみられるが、低Mg血症ではシスプラチンの尿細管への取り込み亢進を介して腎障害が増悪し、Mg補充にて腎障害が軽減する。 そこで、DPP-4阻害薬の保護効果がMgと異なる機序であるのか、もしそうであればDPP-4阻害薬とMg補充療法は単剤による保護効果を上回るかどうかを検証した。 まず、低Mg血症を誘導するラットモデルを作成した。このモデルではシスプラチンによる腎障害が増悪し、Mg補充により腎障害が軽減することを確認した。また、腎内のシスプラチン濃度は投与2日目のピーク時に低Mg血症を誘導したラットでは上昇し、Mg補充により通常食を与えたラットと同等な程度まで低下したことから、低Mg血症ではシスプラチンの腎内取り込みが亢進することを再現できた。一方で、通常食を与えたラットにDPP-4阻害薬を投与した場合は腎内のシスプラチン濃度はDPP-4阻害薬非投与のラットと同等であり、DPP-4阻害薬のシスプラチン腎障害軽減効果はMgによるものとは異なることが明らかになった。 次に、低Mg血症を誘導したラットにMg補充療法およびDPP-4阻害薬を投与し、併用によるさらなる腎保護効果を確認した。また、低Mg血症のラットにDPP-4阻害薬単剤を投与した場合、シスプラチン腎症軽減効果が消失することが明らかになった。 以上から、DPP-4阻害薬によるシスプラチン腎症保護効果はMg補充によるシスプラチンの腎内取り込み抑制とは異なる機序によることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mg補充とDPP-4阻害薬の併用療法による保護効果が明らかとなった部分については順調であるが、低Mg状態ではDPP-4阻害薬の保護効果が消失するという結果が当初の予測に反して得られた。この現象は低Mg血症をしばしば認める癌患者において、低Mg血症の補正を行わなければDPP-4阻害薬の保護効果が得られないことを示唆しており、その原因探索は重要と考え、検討を行っており、DPP-4阻害薬がシスプラチンの抗癌作用に与える影響の検討には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
DPP-4阻害薬の保護効果はインクレチンであるGLP-1に依存することが報告されている。そのため、GLP-1活性やその下流のインスリン作用などの検討を行い、低Mg血症でこれらの項目の変化がないかを検証予定である。また、シスプラチンの抗癌作用にDPP-4阻害薬が与える影響についても予定通り検証を進めていく方針である。
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