2022 Fiscal Year Research-status Report
トロンボモジュリンによる進行期の糖尿病性腎症の抑制
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21K16185
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
竹下 敦郎 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (10830490)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒト組換えトロンボモジュリン / 糖尿病性腎臓病 / 腎線維症 / 肺線維症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト組換えトロンボモジュリン(rhTM)は本邦で播種性血管内凝固症候群の治療薬として使用されているが、近年抗炎症作用、抗線維化作用および抗アポトーシス作用で注目されている。先行研究において、我々はrhTMが腎ポドサイト特異的にヒトTGFβ1を過剰発現させた腎線維症マウスに対して腎保護作用を有することを報告した。本研究の目的は、rhTMが糖尿病性腎臓病の進行期においても腎機能低下および腎線維化の進行を抑制しうるか検証するものである。糖尿病性腎臓病での検証では同腎線維症マウスに対してストレプトゾトシン(STZ)により糖尿病を誘導し、糖尿病性腎臓病モデルとして実験を行う。準備実験として行った腎線維症モデルマウスに対するSTZ投与実験の解析をすすめた。STZを投与された腎線維症マウスは、STZを投与された野生型マウスおよびSTZを投与しない腎線維症マウスと比較して、腎線維化および腎機能低下が進行することを報告した。さらに、腎特異的TGFβ1過剰発現マウスでは、インスリン抵抗性の上昇も合わせて証明された。
また、近年は慢性疾患と細菌叢の関連が注目されているが、以前我々は肺線維症の研究において、ブドウ球菌由来のペプチド「corisin」が肺胞上皮細胞のアポトーシスおよび肺線維症の増悪に関連することを報告した。肺特異的TGFβ1過剰発現マウスにおいて、corisin濃度は線維化の程度と正の相関を認めた。さらに、ブレオマイシン投与により肺線維症を誘発した野生型マウスにおいて、線維症のないマウスと比較して肺組織中のcorisinが有意に高値となった。これらはcorisinが肺線維症のバイオマーカーとなりえることを示す結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの検討で、腎線維症を伴うより進行した糖尿病性腎臓病モデルマウスとして、腎特異的ヒトTGFβ1過剰発現マウスに対するストレプトゾトシン投与が有用であることを証明した。また、糖尿病性腎臓病の進行に重要なポドサイト障害に関連して、肺胞上皮細胞のアポトーシスを増加させるブドウ球菌由来のペプチドが、肺線維症の重症度と相関することを示した。この結果はCorisinのポドサイトに対するアポトーシス活性に加えて、腎線維症においてもcorisinがバイオマーカーとなる可能性を示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記検討より、以下のとおり検討を行う ・糖尿病性腎臓病に対するrhTMの保護効果の検討は、野生型および腎線維症マウスにSTZ投与後2-3か月程度経過してから、腎機能でグループ分けを行い、rhTMを投与する。上記検討ではSTZ投与後9週で腎臓病の悪化を認めた。 ・高血圧合併腎線維症については、当初の予定通り皮下浸透圧ポンプにてアンジオテンシンⅡを投与し、rhTM投与の並行投与により腎障害を抑制しうるか検討する。 ・rhTMのヒト初代培養ポドサイトに対する抗アポトーシス経路に関連して、すでに報告したTGFβ1によるアポトーシスの抑制作用の他、corisinが誘導するアポトーシスに対し、rhTM事前処理が抗アポトーシス作用を示すか検証する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Inhibition of lung microbiota-derived proapoptotic peptides ameliorates acute exacerbation of pulmonary fibrosis2022
Author(s)
Corina N. D’Alessandro-Gabazza, Taro Yasuma, Tetsu Kobayashi, Masaaki Toda, Hajime Fujimoto, Osamu Hataji, Hiroki Nakahara, Atsuro Takeshita, Kota Nishihama, Tomohito Okano, Haruko Saiki, Yuko Okano, Atsushi Tomaru, Valeria F. D’Alessandro, Akira Mizoguchi, Tetsuya Nosaka, Yutaka Yano, Isaac Cann, Esteban C. Gabazza
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 13
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 細菌由来ペプチド corisin がポドサイトのアポトーシスを誘導する2022
Author(s)
岡野 優子, 井上 知紗, 竹下 敦郎, 西濵 康太, 安間 太郎, バレリア・フリードマン, ガバザ・コリナ, 戸田 雅昭, 上村明, 鈴木 俊成,矢野 裕, ガバザ・エステバン
Organizer
第37回日本糖尿病合併症学会