2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K16209
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
一條 遼 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (50804382)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 老化 / 表皮幹細胞 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
表皮幹細胞の加齢変容は、酸化ストレスなどによって生じるDNA損傷など細胞内部の変化が要因であることが報告されていた。しかし、表皮幹細胞を取りまく周囲の環境の加齢変化やそれが表皮幹細胞に及ぼす影響については未解明であった。本論文では、表皮を裏打ちする真皮のかたさに着目することで、表皮幹細胞を取り巻くメカノフィールドの加齢変容が、表皮幹細胞老化を誘導するメカニズムを解明した。 加齢変容の原因を探るため、表皮幹細胞の遺伝子発現を若齢マウスと高齢マウスで比較したところ、高齢マウスで発現上昇した遺伝子群には、カルシウムシグナルに関する遺伝子が有意に濃縮していた。次に皮膚真皮の硬さを測定したところ、高齢マウスでは若齢マウスよりも硬くなっていた。さらに、基質のかたさを認識して活性化するメカノイオンチャネルであるPiezo1を表皮特異的にノックアウトしたところ、加齢で誘発される長期カルシウムパルスが抑制されるとともに、表皮幹細胞の加齢変容も抑制された。従って、加齢による真皮の硬化が表皮基底細胞でのPiezo1の持続的活性化を誘導し、カルシウムが持続的に流入することによって、表皮幹細胞の加齢変容が誘発されることが分かった。 次に、加齢による真皮硬化の原因を検討した。免疫染色により、加齢マウスでは真皮の血管が減少していることが分かった。さらに、single cell RNA sequence、ノックアウトマウスを用いた実験から、加齢によって線維芽細胞がPentraxin 3(Ptx3)を分泌し、それにより血管減少が誘導されることが明らかとなった。以上の結果から、加齢に伴い真皮線維芽細胞からPtx3の発現が上昇し、それが血管の減少と真皮の硬化を誘導し、Piezo1を介したカルシウムの長期流入による表皮幹細胞の加齢変容を誘発するという新たな皮膚老化機構が明らかとなった。
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Research Products
(5 results)