2022 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄に多発する化膿性汗腺炎に生じる線維化や疼痛の理解と治療標的の網羅的探索
Project/Area Number |
21K16214
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大嶺 卓也 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50880738)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 化膿性汗腺炎 / 線維化 / MZB1細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
化膿性汗腺炎は、腋窩や鼠径部、臀部などの終毛性毛包に生じた炎症が慢性的に持続し、皮下硬結や瘻孔を形成し、組織破壊的に線維化の強い瘢痕へ進行する好中球性の炎症性皮膚疾患である。東アジアや日本においては稀な疾患とされているが、沖縄県は化膿性汗腺炎の発症が国内では例外的に多い地域である。 我々の目的は、化膿性汗腺炎における線維化に関与するサイトカインやその産生細胞、治療標的となる蛋白を同定し、長期の炎症から線維化に至るメカニズムを解明することである。今回の研究では化膿性汗腺炎の病変部のFFPE組織よりRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析を行った。 病変部のトランスクリプトーム解析の結果、膿性汗腺炎では、健常コントロールや他疾患と比較してCTGFやCOL1A1、COL3A1、COL14A1、エラスチン(ELN)などの遺伝子が高発現しており独特の遺伝子発現がみられた。またB細胞の1群であるMZB1細胞に関連する遺伝子の高発現がみられた。化膿性汗腺炎病変部の免疫染色ではMZB1陽性細胞が多く見られ、それらはCD79+、CD38+、CD138+、CD20-の細胞であり、CTGFとも共染された。健常線維芽細胞にCTGFを24時間添加したところ、添加濃度に応じてCOL1A1、COL3A1エラスチンの高発現がみられた。 以上の結果より、化膿性汗腺ではB細胞の一群であるMZB1細胞がCTGFを産生することで病変部の線維化をきたしていることが明らかになった。 化膿性汗腺炎は欧米では多くみられるが、東アジアでは比較的まれな疾患である。しかし、沖縄県はアジアの中では例外的に患者が多い地域であり、さらに性差などの臨床的な特徴も欧米と異なることがわかっている。遺伝的背景をもとに、病態が人種によって異なることが予想され、本研究は治療法の開発も含め意義があり、東アジアの患者に還元できる可能性が高いと考える。
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