2022 Fiscal Year Research-status Report
新しく確立した炎症後色素沈着モデルマウスを用いた治療法の開発
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21K16220
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中野 祥子 山形大学, 医学部, 医員 (10740665)
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Project Period (FY) |
2022-02-01 – 2025-03-31
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Keywords | 炎症後色素沈着 / 外用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、炎症後色素沈着(Post-Inflammatory Hyperpigmentation:PIH)モデルマウスを用いて病態解明を行い、病態に基づいた治療法を確立することである。 令和4年度はPIHモデルマウスを用いた既知治療法の検証を予定した。現在、炎症後色素沈着に保険適応が認められている薬剤はないため、アトピー性皮膚炎や色素性疾患の治療に用いられることのあるタクロリムス軟膏、トレチノイントコフェリル軟膏、0.3%ヘパリン類似物質軟膏、トラネキサム酸軟膏の4剤で検証することとした。 具体的な方法として、PIHモデルマウス(Nakano S, et al. Pigment Cell Melanoma Res. 34(1), 101-110, 2021)を作製し、背部に各外用剤(各群4匹)の塗布を開始した。外用剤は0.1%タクロリムス軟膏、0.25%トレチノイントコフェリル軟膏、0.3%ヘパリン類似物質軟膏、8%トラネキサム酸の4群とした。右半分に各薬剤、左半分にワセリン(コントロール)を塗布した。塗布は週5回、1回0.3g外用し、10週まで外用と観察を続けた。1週毎にメラニンインデックスを測定した。 結果は、4群全てにおいてコントロールと比較して有意差を認めなかった。しかし、トレチノイントコフェリル軟膏とトラネキサム酸軟膏についてはメラニンインデックス低下の傾向がみられ、0.1%タクロリムス軟膏ではメラニンインデックス上昇の傾向があった。 これら4剤の外用剤は湿疹や潰瘍治療薬として用いられる薬剤であり色素沈着への効果のメカニズムはまだ不明である。今後、真皮のメラニン含有細胞の分子生物学的特徴の解析を進め、外用やレーザーでの治療につなげていくことが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度はPIHモデルマウスを用いた既知治療法の検証を予定した。皮膚炎や色素性疾患の治療に用いられることのあるタクロリムス軟膏、トレチノイントコフェリル軟膏、0.3%ヘパリン類似物質軟膏、トラネキサム酸軟膏の4剤での検証を予定通り施行した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は病態のキーとなる真皮マクロファージの分子生物学的解析、メラニン合成・分解のシグナルとなる因子の分子生物学的解析を検討する。申請者の検討から、PIHが長期間残存する原因として真皮のメラニン含有細胞(マクロファージ)の影響が考えられた。また、その中でも特にCD68+, F4/80-のマクロファージが病態のキーになる細胞として予想されている。PIHモデルマウスの皮膚を経時的に採取し、さらに追加で免疫組織化学染色とフローサイトメトリーでメラニン含有細胞(マクロファージ)の特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験で使用する試薬について、研究室内ですでに使用している試薬を一部用いた。それにより当初計画より経費を節約することができたため、未使用額が発生した。 次年度以降の試薬購入のために使用する予定である。
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