2021 Fiscal Year Research-status Report
複製フォーク上での異性型ポリコム抑制性複合体1による造血前駆細胞の運命制御機構
Project/Area Number |
21K16257
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高野 淳一朗 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (00852162)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 初期造血 / ポリコム抑制性複合体 / DNA複製 / クロマチンリモデリング因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究では、複製フォーク近傍に局在するPCGF1-PRC1の分子生物学ならびに発生学的機能を明らかにすることを目的としている。PCGF1がフォーク近傍に局在することはこれまで報告されていなかったため、その局在についてのより強固な証拠が必要であると考え、今年度は、新生DNA鎖を抽出するiPOND(isolation of proteins on nascent DNA)法にクロマチン免疫沈降法(ChIP)を組み合わせた手法(iPOND-ChIPSeq)によりPCGF1の新生DNA鎖上(複製フォーク近傍)での局在をより明確にした。また、Pcgf1欠損により新生DNA鎖上に転写活性化作用を持つクロマチンリモデリング因子SWI/SNF複合体の構成要素であるSMARCA4が異常集積すること、ならびにチミジンチェイスを行い成熟過程のDNAを採取することで、このSMARCA4の蓄積過剰は新生DNA鎖上でのみ起こることを見出した。これまでに、転写抑制作用を持つポリコム抑制性複合体(PRC)とSWI/SNF複合体の発生における競合性が提唱されてきたが、哺乳類の生理学的環境下での競合作用の分子生物学的証拠はほとんど報告されていない。本年度の成果は、この競合作用が造血前駆細胞の複製フォーク近傍で起こることを新たに見出したことに意義がある。今後は、この競合作用のクロマチン継承における役割、ひいてはその作用の細胞運命決定への影響をはじめ、生物学的意義について追求することで複製フォーク上のPCGF1-PRC1の機能を明らかにしていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SWI/SNF複合体とPRCの競合が複製フォーク近傍で起こるという、これまで知られていなかった事項の分子生物学的証拠を見出したため
|
Strategy for Future Research Activity |
複製フォーク近傍特異的に起こるPCGF1とSMARCA4の競合現象の分子生物学的意義の詳細(すなわちフォーク上のPCGF1の機能)を明らかにするため、SMARCA4の分解により、Pcgf1欠損で見られていたフォーク近傍でのヌクレオソーム密度の低下およびそれに伴う、H3K27me3を介したミエロイド遺伝子発現抑制の異常が解除されるかという視点で今後実験を行っていく。
|
Causes of Carryover |
今年度は次世代シーケンスに関連する実験が、想定より少なくなったため試薬やシーケンスにかかる費用が抑えられた。次年度以降、同実験の頻度が増すため未使用額は次年度その費用にあてる予定である。
|