2022 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の分化異常が引き起こす造血不全の病態解析
Project/Area Number |
21K16258
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
林 康貴 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (10854664)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨髄微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、造血器腫瘍により造血幹細胞(HSC)支持能を障害されたMSCの亜集団構成変化から病態の中心となる細胞集団を見出し、そのHSC支持メカニズム解明を通じて正常造血回復への新しいアプローチの探索を行っている。これまでに複数の造血器腫瘍モデルマウスを用いた骨髄MSCのscRNA-seq解析を実施し、MSCマーカーの一つであるLeptin receptor遺伝子高発現(Lepr-high)の亜集団において顕著なニッチ因子の発現低下や骨芽細胞系列への分化抑制が認められ、それにより骨芽細胞系列にコミットした亜集団が著減することを明らかにした。これらの知見から、Lepr-high MSC亜集団は造血器腫瘍の病態に鍵となる役割を果たしており、その機能異常を司る制御因子は有望な治療標的になると考えられた。そこでMSCのscATAC-seq解析を実施することでニッチ因子発現制御機構を検討した。その結果、Lepr-high亜集団で顕著なクロマチン状態の変化が見られ、特に影響が顕著であったCxcl12においてエンハンサーと考えられる領域の活性低下が造血器腫瘍モデルで確認された。当該領域はヒトでも保存されており、健常な骨髄微小環境では同部位を用いて発現を正に制御していることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
造血器腫瘍モデルマウス由来MSCを用いたscATAC-seq解析から、Lepr-high MSC亜集団におけるクロマチン変化を明らかにした。また主要なニッチ因子であるCxcl12の未知の制御領域を見出し、造血器腫瘍において当該亜集団のHSC支持機能が抑制するメカニズム解明にむけて、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から造血器腫瘍ではLepr-high MSC亜集団において遺伝子発現とクロマチン状態の顕著な変化が確認された。また腫瘍モデルにおいて、HSC維持に必須なニッチ因子であるCxcl12の未知の制御領域を見出した。そこで本年度は、同ゲノム領域による造血支持細胞集団の構築やCxcl12を中心としたニッチ因子の制御機構を解析する。MSCはin vitroで培養すると速やかにニッチ因子の発現を消失することから評価には生体モデルを必要とする。そのため、まずCRISPR技術を用いて当該領域を欠失したマウスを作成し、Lepr-high MSC亜集団を中心に遺伝子発現制御プログラムを解析する。また造血細胞の質的・量的変化をフローサイトメトリー解析やマウス同種移植により明らかにする。ここから得られる知見を利用することで、造血器腫瘍におけるニッチ再構築とそれに伴う正常造血抑制メカニズムを明らかにし、将来の創薬へ礎となるデータ取得する。
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Causes of Carryover |
物流の停滞等のために、一部研究試薬の納品が大幅に遅れる期間が長く続いたため、本年度中の全額使用とならなかった。次年度使用額は、従来の研究計画に従って順次使用する。
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Research Products
(3 results)