2023 Fiscal Year Research-status Report
肝臓GVHDにおける腸内細菌叢と肝臓免疫担当細胞とのクロストークの解明
Project/Area Number |
21K16259
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒 隆英 北海道大学, 大学病院, 助教 (50845302)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肝臓GVHD |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで用いてきたGVHDのマウスモデル(ドナーにB6マウス、レシピエントにBDF1マウスを用いたMHC半合致骨髄移植モデル)を用いてGVHDの病態形成機序に関する検討を引き続き行った。 これまでの結果から、肝臓においてはトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)が特異的に上昇していることが明らかとなり、その産生細胞が炎症性マクロファージであることがわかっている。肝臓GVHDではこの炎症性マクロファージが産生するTGFβによって胆管上皮が傷害を受けることにより肝臓GVHDの病態が形成されることが明らかとなった。 一方、下部消化管GVHDにおいては腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)がGVHDの病態形成に重要な役割を果たしていることが知られているが、肝臓や上部消化管でのGVHD病態形成への腸内細菌叢の関与については不明な点が多い。 我々は上記モデルを用いて、これらの臓器におけるGVHDと腸内細菌叢との関係性について解析を進めた。上部消化管についてはGVHDによってLGR5陽性の胃幹細胞が傷害を受けており、結果として胃酸分泌の低下が生じて十二指腸における好気性細菌の異常増殖へと繋がることが明らかとなった。十二指腸におけるdysbiosisは最終的にはより下部消化管のdysbiosisへとつながってさらなるGVHD悪化を導く。また、肝臓は胆管/胆汁を介して腸管(特に十二指腸)とつながっており、両者の間でなんらかのクロストークが行われている可能性があり。実際、肝臓では同種移植後に胆管周囲に細菌浸潤が生じることを免疫染色で確認できていることから、異常な腸内細菌叢が肝臓内へ浸潤して炎症を惹起して肝臓GVHDの病態形成へとつながっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上部消化管GVHDの発症メカニズムについては明らかとなり、結果として十二指腸における細菌叢の乱れが生じることが明らかとなった。一方で肝内に浸潤する細菌叢や胆汁内に存在する細菌叢についての解析は、免疫染色による定性的な評価はできているものの、浸潤する細菌量が腸管に比較して少ないこともあって、定量的にはまだ解析が十分に行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は肝臓内や胆汁内の細菌叢に関する適切な評価方法を確立することで、菌叢の相同性/相違性についての評価を行いたいと考えている。
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