2022 Fiscal Year Research-status Report
再生不良性貧血における7番染色体欠失クローン進展機序の解明
Project/Area Number |
21K16265
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
材木 義隆 金沢大学, 附属病院, 特任助教 (70895747)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 再生不良性貧血 / 骨髄異形成症候群 / モノソミー7 / HLA |
Outline of Annual Research Achievements |
フローサイトメトリーを用いたモノソミー7検出法では、7番染色体にコードされ、細胞表面に高発現するCD36分子に焦点を当てた。CD36は全血球に発現しているわけではなく、特に単球や血小板などの一部の血球に高発現し、CD14+CD16-単球では均一に高発現していた。さらに、CD14+CD16-単球の中でCD36の細胞表面発現量(平均蛍光強度:MFI)は、モノソミー7陽性例で健常者に比べて低下していた。したがって、特に低いCD36の細胞表面発現量を持つ単球をソーティングすることで、モノソミー7陽性細胞を濃縮できる可能性があると推測した。しかし、モノソミー7陽性の3例において、CD36hi(MFI 25パーセンタイル以上)CD14+CD16-単球とCD36low(MFI 75パーセンタイル未満)CD14+CD16-単球をソーティングし、それぞれの細胞集団におけるモノソミー7陽性細胞比率をFISH法で検討したが、両群間に有意な差は認められなかった。 米国の再生不良性貧血患者を対象とした解析では、HLAクラスIアレル欠失血球を持つ再生不良性貧血患者は、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病などの骨髄系腫瘍へのクローン進展が増加していた。これに基づき、日本の再生不良性貧血患者を対象としたHLAクラスIアレル欠失血球のスクリーニングと予後調査を継続した。その結果、HLA-A*02:01を欠失した血球を持つ再生不良性貧血患者は、日米で共通して骨髄系腫瘍へのクローン進展が高頻度であることが明らかとなった。一方、HLA-A*02:01以外のアレルの欠失はクローン進展に影響せず、免疫抑制療法への高反応性と関連することが示された。したがって、再生不良性貧血患者の治療方針に決定において、HLAアレル欠失の有無だけでなく、欠失するHLAアレルの種類を同定することが重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していた2種類のモノソミー7高感度検出系の検証を終えたが、いずれも十分な検出精度を得られなかったため、研究計画の変更が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA-A*02:01欠失血球陽性再生不良性貧血患者を対象に網羅的なゲノム解析を行い、なぜHLA-A*02:01欠失血球を保有する患者では、高率に骨髄異形成症候群に移行するのかを明らかにする。また、HLA-A*02:01欠失血球陽性は、免疫抑制療法の予後が不良であることから、同種骨髄移植により予後の改善を得られるか否かを、全国調査データを用いて解析する。
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Causes of Carryover |
モノソミー7の検出系の感度が想定していたよりも低く、研究計画の見直しが必要となった。HLA-A*02:01欠失陽性例が骨髄系腫瘍へクローン進展しやすい原因を明らかにするために、症例数のさらなる蓄積と、患者サンプルを用いた網羅的なゲノムシークエンスを行う。繰り越した研究費は、モノクローナル抗体の購入、ゲノムシークエンス、学会発表、論文化などに使用する。
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