2022 Fiscal Year Research-status Report
MPN発症のカギを握る巨核球:患者骨髄環境における腫瘍性巨核球の働きとは?
Project/Area Number |
21K16275
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
奥田 真帆 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (50803441)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨髄増殖性腫瘍 / MPN / 巨核球 / RNA-seq / 網羅的遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄増殖性腫瘍 (MPN) は、造血幹細胞にドライバー遺伝子変異が生じた結果、末梢血中の特定の血球の異常な増加や、骨髄の線維化が生じる造血器腫瘍である。患者骨髄では、血小板の前駆細胞である成熟巨核球の著しい増加や形態異常が観察されることから、ドライバー遺伝子変異を獲得した造血幹細胞が分化することで産生された腫瘍性巨核球がサイトカインやエクソソームの産生を介してMPNの病態形成に関与していると考えられている。本研究では、こうした腫瘍性巨核球が、骨髄増殖性腫瘍 (MPN) の発症において果たす役割を解明することを目的としており、これまでにMPN患者骨髄から単離した成熟巨核球についてRNA-seq解析を実施した。 今年度は、RNA-seq解析によって同定された、MPN患者由来の成熟巨核球に特異的に発現する遺伝子(MPN発現遺伝子)について、MPN発症との関連を解析した。まずRT-qPCR法によりMPN患者由来の巨核球においてこれらの遺伝子が発現していることを確認した。次に、MPN患者末梢血から単離したCD34陽性造血幹細胞を培地中で分化誘導した結果、分化した巨核球においてMPN発現遺伝子の発現を検出した。そこで、同様の造血幹細胞におけるMPN発現遺伝子の発現をRNA干渉法により抑制し、上記in vitro分化誘導モデルを用いて巨核球分化への影響を評価した。さらに、MPN発症モデルマウスから血小板を採取し、MPN発現遺伝子についてRT-qPCR法により発現量を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに同定したMPN発現遺伝子について、患者細胞およびモデル細胞を用いてMPN発症との関連について解析を進めており、研究は計画通りに進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
MPN患者巨核球におけるMPN発現遺伝子発現の意義を明らかにするため、以下の実験を行う。 (1) 昨年度に続き、MPN患者由来の造血幹細胞におけるMPN発現遺伝子の発現を抑制し、in vitro分化誘導モデルを用いて、巨核球分化や細胞増殖に与える影響についてフローサイトメトリー解析やコロニーアッセイにより評価する。より多くの患者の造血幹細胞を用いて結果を検証する。 (2) MPN患者においてMPN発現遺伝子を発現する細胞、およびタイミングについて解析する。遠心分離法およびセルソータを用いて血小板以外の血球細胞を患者末梢血から分離し、RT-qPCR法によりMPN発現遺伝子の発現を解析する。また、MPN患者骨髄検体から造血幹細胞および前駆細胞をセルソーターによって単離し、同様に解析することで、実際の患者骨髄で生じる巨核球分化においてMPN発現遺伝子が発現誘導されるタイミングついて解析する。 (3) 本研究に使用したMPN患者細胞について、該当患者の末梢血全血DNAを用いて全エクソーム解析を実施する。MPNドライバー遺伝子変異のアリル頻度およびその他の遺伝子変異を解析し、RNA-seq解析や分化誘導実験の結果と組み合わせて、MPN発現遺伝子の発現とMPN病態形成との関連について明らかにする。
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Causes of Carryover |
モデルマウスを用いたMPN発現遺伝子の解析実験の結果を受け、想定よりも試験規模が縮小したため繰越しが発生した。繰越金は、計画よりも解析検体数が増えた全エクソーム解析に充当する。
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