2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of CAR-T cell therapy utilizing precursor T cell
Project/Area Number |
21K16277
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
重廣 司 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (30876058)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | T細胞免疫療法 / T前駆細胞 / キメラ抗原受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
キメラ抗原受容体(CAR)を用いたCAR-T細胞によるがん免疫療法は優れた臨床成果をあげている。このCAR-T細胞療法の治療効果を増強させるため、造血幹・前駆細胞(HSPC)から“若く”活発なT細胞を作製する方法が提案されている。我々は、以前に、T細胞分化途中段のT前駆細胞を自己複製させつつ増幅させ、また、T細胞受容体(TCR)遺伝子を導入したCD8陽性TCR-T細胞を作製することに成功している。本研究では、このT前駆細胞の自己複製能に着目し、大量にCAR-T細胞を作製することを目的とした。 本年度は、我々が独自に開発したリンパ球前駆細胞の特性をもつ人工白血球幹(iLS)細胞を用いて、T前駆細胞がCAR-T細胞の供給源として有望であるか検証した。CD19特異的CAR遺伝子を導入したiLS(CD19-CAR iLS)細胞を樹立し、このCD19-CAR iLS細胞をOP9/Delta-like 1(OP9/DLL1)細胞上で培養することによりT前駆細胞を生成した。このT前駆細胞は、IL-7などのサイトカインを高濃度で添加することによって、自己複製しつつ増幅することが確認された。さらにサイトカイン濃度を調節することで、T細胞の分化を進展させ、CD8陽性T細胞へと成熟させることに成功した。この結果をもとに、ヒト臍帯血由来のCD34陽性細胞からT前駆細胞を作製した。このT前駆細胞は成熟T細胞へと分化することが確認された。加えて、このT前駆細胞はNK細胞への分化能をもつことを明らかにし、HSPCから作製する従来法よりも多量にNK細胞を生成させることに成功した。さらに、このNK細胞は高い細胞障害性サイトカインの産生能を示した。したがって、T前駆細胞がCAR遺伝子導入免疫細胞の供給源としての有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、T前駆細胞の自己複製能を利用することによって、効率的にCAR免疫細胞を作製することを目的とした。本年度は、iLS細胞を用いて、CD19-CAR遺伝子を導入したT前駆細胞が自己複製しつつ増幅できることを明らかにした。また、ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞からT前駆細胞を作製する方法を確立し、かつ、このT前駆細胞を成熟T細胞へと分化させることにも成功した。さらに、意外なことに、このT前駆細胞から細胞障害活性を有するNK細胞も効率的に作製できることを明らかにした。これらのことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞から作製したT前駆細胞にCD19-CARを遺伝子導入し、CAR-T細胞を作製して、その抗原特異的な細胞障害活性を評価する。近年では、CAR-NK細胞が、CAR-T細胞とは異なり、他家移植が可能な汎用性CAR免疫細胞移植療法として注目を集いる。2021年度は、T前駆細胞から多量にNK細胞を作製できることを見出した。そこで、CD19-CAR遺伝子を導入したT前駆細胞からCAR-NK細胞を作製することも試みる。このCAR-NK細胞の抗原特異的な細胞障害活性を、CAR-T細胞の場合と同様にして、評価する。これらの実験により、T前駆細胞を用いた新たなCAR免疫細胞移植療法の創出を目指す。
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