2021 Fiscal Year Research-status Report
網羅的遺伝子解析を用いた強皮症特異的単球master regulatorの同定
Project/Area Number |
21K16310
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
井関 ゆう子 日本医科大学, 医学部, 助教 (50723045)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マクロファージ / master regulator / 網羅的遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性強皮症(SSc)は血管内皮障害および線維化を特徴とする疾患である。単球・マクロファージがその病態に重要な役割を果たしていることは知られているが、SSc特異的単球・マクロファージの同定には至っていない。本研究は、in vitroで分化誘導したマクロファージの網羅的遺伝子解析から、異なる誘導因子によるマクロファージ分化誘導のmaster regulatorを同定し、それらを元にmaster regulator抽出アルゴリズムを構築する。構築したアルゴリズムを用いてSSc単球RNA-seq及び末梢血単核球single cell RNA-seqデータを解析し、SSc特異的単球・マクロファージにおけるmaster regulatorを同定することを目的としている。 本年度は、まず各誘導マクロファージの遺伝子発現の網羅的解析を行う際のコンディション調整を行った。末梢血単核球を密度勾配法にて抽出し、magnetic beadsでCD14+単球を単離し、CSF-1を初めとする各種成長因子、サイトカイン、ケモカイン添加のもと培養し、total RNAを抽出する。この過程において、誘導因子の濃度変化や培養時間の調整により、cell viability等を検討し、最適な誘導条件を設定した。さらに、既報を参考に、発現変動遺伝子の抽出、pathway解析、データの統合といったRNA-seqおよびcsRNA-seqデータの解析手法を習得した。 今後は、早急に異なる因子により誘導したマクロファージの網羅的遺伝子解析を行い、master regulatorの同定を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、in vitroにおいて異なる因子により分化誘導するマクロファージの誘導コンディションの調整および、網羅的遺伝子解析を行い、各コンディションにおける発現変動遺伝子群の同定、クラスター解析、Pathway解析等を通じて、各誘導コンディションにおけるmaster regulatorを同定する予定としていた。しかし、新型コロナウィルス感染症蔓延により医療体制が逼迫し、新型コロナウィルス感染症診療に従事する必要があったこと、成長因子やサイトカインといった海外からの研究試薬や細胞培養製品の納入に遅れが生じたことなどからマクロファージ誘導コンディションの調整に時間を要した。さらに、網羅的遺伝子解析については、一部を受託予定としていたが、受託業者の受入制限等もあり計画に遅れが生じている。今後は、早急に異なる因子により誘導したマクロファージの網羅的遺伝子解析を行い、master regulatorの同定を進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず初年度で設定した条件下で分化誘導したマクロファージのRNAを抽出し、RNA-seqにより分化誘導方法の異なるマクロファージにおける発現遺伝子プロファイルを網羅的に解析し、各誘導コンディションにおけるmaster regulatorを同定を早急に行いたいと考えている。網羅的遺伝子解析により抽出された各コンディションに特徴的なマーカー、master regulatorの検証をRT-qPCR、フローサイトメトリー、ウェスタンブロットにて行う予定である。その後、それらを元にmaster regulator抽出アルゴリズムを構築する。構築したmaster regulator抽出アルゴリズムを用いて、すでに当院で施行している全身性強皮症単球RNA-seq及び末梢血単核球single cell RNA-seqにおける単球分画のデータを解析し、全身性強皮症特異的単球・マクロファージの同定およびそれらの特徴的マーカー、master regulatorの同定につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
初年度中にマクロファージの分化誘導条件を設定し、網羅的遺伝子解析を受託で行う予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴い、研究用試薬や細胞培養関連製品等の納入遅延が生じ、また受託についても受入制限が生じたことから、今後受託で分化誘導方法の異なるマクロファージにおける網羅的遺伝子解析を行う予定である。RNA-seqの解析結果を検証し、各コンディションにおけるmaster regulatorを同定する。その後、一般公開データとの統合解析からmaster regulator検索アルゴリズムの構築を予定している。統合解析やアルゴリズム構築に際し、いくつかのplatformの使用を検討している。また、当科で施行したSSc患者monocyte RNA-seqデータ、末梢血単核球scRNA-seqにおける単球クラスターの遺伝子発現データを上記アルゴリズムに導入し、全身性強皮症特異的単球・マクロファージにおけるmaster regulatorを同定し、多数検体で検証を行う予定である。RNA-seqデータおよびmaster regulatorの検証はRT-qPCRおよびflow cytometry、western blottingを予定しており、それらの試薬の購入を予定している。
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