2021 Fiscal Year Research-status Report
レプトスピラの脂肪組織定着機構を利用したレプトスピラ症新規バイオマーカーの創出
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21K16320
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
尾鶴 亮 福岡大学, 医学部, 助教 (70763035)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レプトスピラ / 脂肪組織 / アディポカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、病原性細菌レプトスピラ感染によって産生される宿主脂肪組織由来バイオマーカー候補の探索を行った。具体的には、(1)ヒト皮下脂肪組織を用いたex vivo感染実験系の確立と評価、(2)ex vivo感染実験系で産生されるアディポカインの測定を行った。 (1)ヒト皮下脂肪組織を用いたex vivo感染実験系の確立と評価:既存手法(Schopow N, et al. PLoS One. 2020;15: e0233152.)に則ってex vivo培養実験系を確立した。福岡大学形成外科学分野に協力を受け、手術時に出る余剰の皮下脂肪組織を入手し、ティッシュチョッパーを用いて細断した後セルカルチャーインサート上で培養した。最大10日間程度は培養が可能であった。培養開始翌日から3日後にかけて毎日メディウムを交換し抗生物質を除去し、培養4日後にレプトスピラを添加し最大3日間観察を行った。蛍光免疫染色を行ったところ、病原性レプトスピラは脂肪組織に付着し生存していた。 (2)ex vivo感染実験系で産生されるアディポカインの測定:レプトスピラ感染6時間後、24時間後のex vivo感染実験系培養上清を回収し、Proteome Profiler Human Adipokine Array Kit(R&D systems)を用いてアディポカインを測定した。非感染群と比較し、IL-6(インターロイキン6)やIL-8、といった炎症性サイトカインやMCP-1(単球走化性因子)といったケモカインが有意に上昇しており、合計10分子を宿主脂肪組織由来バイオマーカー候補として選出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった宿主脂肪組織由来バイオマーカー候補を10候補まで絞り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度選出した宿主脂肪組織由来バイオマーカー10候補について、実際のヒト患者検体から検出され得るか調査を行う。ヒト患者検体の調査はフィリピン大学マニラ校公衆衛生学部Villanueva Sharon教授らの協力を得て行う予定である。 また今回見つかった10候補以外のバイオマーカーを探索するために、本研究の根本的な問である「なぜレプトスピラは脂肪組織に定着し増殖するのか」についても研究を行う必要がある。具体的には、レプトスピラが脂肪組織(脂肪細胞)に定着する分子メカニズムと、それに伴う宿主の免疫応答や脂質代謝変化について詳細な解析を合わせて行う予定である。
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Causes of Carryover |
前倒し請求を行ったが、実験状況により余剰が生じた。具体的には、次世代シーケンサーを用いた受託受託を行う代わりに、プロテオーム解析キットを用いたためである。 次年度使用額については、得られたバイオマーカー候補の検証を行うための渡航費(フィリピン)として計上する予定である。
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