2022 Fiscal Year Research-status Report
レプトスピラの脂肪組織定着機構を利用したレプトスピラ症新規バイオマーカーの創出
Project/Area Number |
21K16320
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
尾鶴 亮 福岡大学, 医学部, 講師 (70763035)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | レプトスピラ / レプトスピラ症 / 脂肪組織 / 脂質代謝異常症 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、病原性細菌レプトスピラが宿主へ経皮的に感染した際に起こる、宿主脂肪組織での代謝変化について焦点を当て研究を行なった。具体的には、マウス由来脂肪前駆細胞3T3-L1を用いたin vitro感染実験系を立ち上げ、脂肪に関する形態・生化学的な解析と、遺伝子発現変動の詳細な解析を行なった。 (1)3T3-L1細胞を脂肪細胞に分化させ、分化10日後にレプトスピラを感染(共培養)すると、3T3-L1に脂肪分解が起こることを見出した。Oil-Red-O染色による定量と、BODIPYによる蛍光免疫染色での形態的解析で脂肪分解を評価した。レプトスピラ感染によって3T3-L1の脂肪量は半減していた。一方、細胞外グリセロール濃度を測定すると、レプトスピラ感染群では検出限界以下であった。レプトスピラの炭素源は脂肪酸・グリセロールであると考えられており、脂肪分解によって脂肪細胞外に放出された脂肪酸・グリセロールをレプトスピラが代謝している可能性が示唆された。一方でレプトスピラの増殖には有意な差が見られず、脂肪分解を促すことで積極的に増殖を行っているわけではなかった。 (2)上記実験系においてRNA抽出を行い、RNA-seq法で遺伝子発現変動の網羅的解析を行なった。脂肪分解を担う酵素(ATGL、HSL、MGLなど)をコードする遺伝子は非感染群と比較して変動がなかったが、脂肪滴の表面タンパク質(PLIN4など)をコードする遺伝子では発現変動が見られ、これは実際の脂肪分解を反映していると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新たに「レプトスピラの感染が宿主脂肪細胞の脂肪分解を促す」という現象を見出すことができた。これにより新たなバイオマーカー候補の探索が可能になると考えられる。一方、昨年度新規バイオマーカー候補として絞り込んだ因子については海外機関との連携が取れず、ヒト検体からの検出まで行えなかった。そのため最終的なバイオマーカー候補を抽出するに至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス由来脂肪細胞へのレプトスピラ感染で起こる脂肪分解について、その分子基盤の解明を進める。具体的には(1)脂肪分解が起こる脂肪細胞内のシグナル伝達の解明、(2)脂肪分解を促すレプトスピラ側の因子探索、(3)メタボロミクスを駆使した脂肪の利活用経路の解明、の3点を進める。 またバイオマーカー因子の探索では、国内機関と連携しヒト検体での解析を進めることも考慮する。
|
Causes of Carryover |
前倒し請求を行い実験消耗品を購入したが、わずかに余剰が出てしまった。次年度の助成金と合わせて当該年度の実験消耗品費用とする。
|