2021 Fiscal Year Research-status Report
HIV-1タンパク質とRNAによるウイルス粒子形成メカニズムの解明
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21K16324
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中村 朋文 熊本大学, 病院, 診療助手 (00772526)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HIV-1 / HIV-1 タンパク質 / HIV-1 RNA / NCINIs / HIV-1 形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
Non-catalytic site integrase inhibitors(NCINIs)の変異体解析: NCINIsはINとHIV-RNAの結合を阻害する薬剤である。NCINIs 耐性アミノ酸変異を有するHIV-1 cloneの解析を行った。Integrase(IN)内のNCINIs耐性アミノ酸変異であるp26変異は、NCINIsに関連する耐性変異であり、p26変異を有するHIV-1-p26 cloneはHIV-1への感染性が低下していた。共存して認められたNucleocapsid(NC)内の変異であるD48Nは、明らかなNCINIsに対する耐性化を認めておらず、一方でHIV-1-D48N cloneの細胞感染性を軽度上昇させていた。しかし、IN内のp26とNC内のD48Nの変異を両方有するクローンは、HIV-1の感染性および複製能が低下していた。したがって、D48Nの変異はp26との同一クローン内での共存は困難であるが、D48N単独でHIV-1の感染性を上昇させることで、感染性が低下しているHIV-1-p26を補完している可能性が示唆された。 蛍光複合体(SNAP-448-NC 、SNAP-546-IN )の相分離現象の解析: HIV-1由来のタンパク質の相分離現象を確認するために蛍光物質(SNAP-Surface 488または546)をHIV-1タンパク質に結合させた複合体に関してE.coliを用いて精製・作成した。野生株に加えて、上述したNCINIs 変異株が相分離現象にどのような影響を与えるか?変異体の作成も行った。NCは水溶性の乏しい不安定なタンパク質であり、非常に精製が困難であった。やや限られた条件において、これらSNAP-INおよびSNAP-NCの野生株と変異株がどのような挙動を示すか蛍光顕微鏡を用いて、時間及び空間的な計測および解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はNCINIs変異を有するHIV-1 cloneを作成し、TZM-bl assay, MTT assay, P24 assayを用いることによって変異による特性をある程度評価することができた。続いて、蛍光複合体が連結した(SNAP-448-NC 、SNAP-546-IN )を作成することによって、野生株と比較して、変異を有するHIV-1タンパク質の特性(folding、安定性、水溶性など)がどのように変化するか?を分析・評価する。これらの既知の実験データと今後の実験で得られるHIV-1 RNAの情報を追加し、HIV-1タンパク質とRNAの相互作用およびウイルス構造形成に関する知見を集積して行く。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はNCINIs変異を有するHIV-1 cloneの特性を調べた。実験で認められた変異を有するHIV-1 cloneの感染性および複製能の低下が、HIV-1タンパク質の構造学的な異常に伴う影響なのか?機能的な異常に伴う影響なのか?深く理解するために、今後は電子顕微鏡(TEM or Cryo-EM)を用いて、HIV-1の詳細な形態(構造変化)を評価することが非常に重要であると考えられる。さらに、HIV-1 RNAの構造を予測するために次世代シークエンサー等を用いた画期的な方法:functional analysis of RNA structure-sequencing (FARS-seq)も検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、比較的高額なルミパルスカートリッジによるP24の測定やHIV-1形態評価のための電子顕微鏡などが行われなかった。また、COVID-19による学会のハイブリット形式の開催で旅費等の使用がなかった。これらの等の原因により次年度使用額が生じた。 次年度はさらに実験内容の充実(電子顕微鏡撮影・次世代シークエンサーによる解析)を図り、できる限り現地での学会への参加は検討している。
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