2022 Fiscal Year Research-status Report
A study of developing a rapid and comprehensive genetic testing method for the diagnosis and treatment of bloodstream infections
Project/Area Number |
21K16327
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
青木 弘太郎 東邦大学, 医学部, 助教 (50821914)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 血流感染症 / 全ゲノム解析 / ナノポア型シークエンサー / Flongle / MinION |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血流感染症の原因菌をサブカルチャーを経ずに逐次全ゲノム解析 (WGS) により解析する検査法の開発を目的としている。初年度は、東邦大学医学部倫理委員会の承認を受けて、診療上必要な検査として提出された血液培養検査の残余検体の6検体を対象にプレリミナリーに検討を開始した。検査のTurn-Around-Time (TAT) を短縮するため、簡易的なDNA抽出方法によって得られたDNAをナノポア型超並列シークエンサー (MPS)のFlongle (オックスフォード ナノポア・テクノロジーズ: ONT) に供したところ、菌種同定および薬剤耐性遺伝子解析に十分なリード出力が得られなかった。DNAサンプルの純度がリード出力低下に与える影響を低減するため、今年度は磁性ビーズを用いたDNA抽出法に切り替えてその後の検討を進めることとした。修正した一連のワークフローの妥当性を確認するため、研究代表者から採血した血液を血液培養ボトルに接種し、全ゲノム解析が完了している6菌種・各5株の薬剤耐性菌をそれぞれスパイクインして作製した擬似血液培養検体を用いた検討を開始した。2022年前期は購入したFlongleフローセルR9.4.1の品質にバラつきが大きく、安定的な出力が得られにくかった。しかし、2022年後期ではFlongleの品質が比較的向上し、Enterococcus属菌を除く5菌種で検出されるべき薬剤耐性遺伝子がすべて検出できる検体が30株中11株で確認された。2023年初頭から利用可能になったR10.4.1にバージョンアップされたFlongleおよびv14ライブラリ調整試薬に切り替えて同検討を進め、これまでの成績を上回るような高精度かつTATの短い逐次WGS開発を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、菌株をスパイクして培養した擬似血液培養検体を用い、ナノポア型MPSによる逐次WGSの妥当性の確認を行った。菌株はMiSeq (イルミナ) によるドラフト全ゲノム解析により菌種および薬剤耐性遺伝子 (ARGs) が明らかなEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa, Acinetobacter baumannii, Staphylococcus aureus, およびEnterococcus spp.の6菌種/属について5株ずつ、計30株を供した。血液培養液10mLから集菌した菌体をビーズ破砕後、magLEAD SV PSプロトコール (プレシジョン・システム・サイエンス) によってDNAを抽出し、Rapid Sequencing Kitにより調整したライブラリをFlongleおよびMinION (いずれもONT) で解読した。菌種同定およびARGs解析にはKmerFinderとResFinderデータベースを用いた。なお、MiSeqの解析結果による保有ARGs数は範囲3-26, 中央値8であった。Flongleのデータにおいて、すべての菌株は正しく菌種同定された。すべてのARGsが検出された株数は上述の菌種順に、2、1、1、3、4、および0 (計11株) だった。Fongle出力データ量増加に伴いARGs検出数も増加した。同DNAをMinIONで解読したところ、さらに9株ですべてのARGsが検出された。Flongle/MinIONの出力が十分に得られれば、サブカルチャーなしに血液培養ボトルから網羅的な菌種同定およびARGs検出が可能である。偶発的解読不良確認のため、内部コントロールをサンプルへスパイクする必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
ONTは2023年初頭にR10.4.1フローセルとv14ライブラリ調整キットをリリースした。これらのバーションアップされた試薬ではリードのクオリティが前バージョンに比較して大きく向上するとプロモーションされている。今後、まずは同じ擬似血液培養検体においてバージョンアップキットを用いた場合の成績の改善を確認する。良好な結果が得られた場合、DNA抽出工程を簡易化し、性能の低下が許容範囲内かを確認する。これと並行し、現在コマンドラインで操作している情報解析パイプラインへグラフィカルユーザーインターフェースを付与し、webブラウザを介して外部端末からも解析を実施可能にする。最終的に、患者血液培養の残余検体を用い、血流感染症の原因菌をサブカルチャーを経ずに逐次全ゲノム解析 (WGS) の性能を検証する。
|
Causes of Carryover |
主要な消耗品であるONTから出荷されるナノポア型MPSのFlongleフローセルの品質が安定せず、検討を一時的に保留した。Flongleフローセルの品質が安定したことを確認してから検討を再開したため、進捗が遅れ次年度使用額が生じた。次年度では、バージョンアップされたフローセルによる検討を進める予定である。
|