2022 Fiscal Year Research-status Report
妊娠出産が家族性中枢性尿崩症のバソプレシンおよびオキシトシンに与える影響の解析
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21K16339
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮田 崇 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (10848857)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 家族性中枢性尿崩症 / 妊娠一過性尿崩症 / バソプレシン / オキシトシン |
Outline of Annual Research Achievements |
① 妊娠出産による雌性家族性中枢性尿崩症(FNDI)マウスの表現型の解析:雌性FNDIマウスを用いて非妊娠群と妊娠出産群に分け、妊娠出産群は妊娠出産を合計3回繰り返した。非妊娠時、出産後のそれぞれの期間における尿量を代謝ケージを用いて比較したところ、妊娠出産群で有意な尿量の増加が見られた。 ② 妊娠出産によるAVP分泌の変化の解析:①の解析で得られた尿検体の尿中のAVPタンパク濃度をRIA法で測定したところ、妊娠出産群では対照群に比してAVP分泌の低下が認められた。 ③ AVPニューロンの細胞死の進展の形態学的解析:FNDIマウスの視索上核を対象とした免疫組織化学にて、妊娠出産群でAVPニューロンの細胞数の減少が認められた。一方でOTニューロンの脱落は認められなかった。 ④ 妊娠一過性尿崩症の再現実験:FNDIマウスを非妊娠群と妊娠群に分け、妊娠群は妊娠中の尿量を測定した。妊娠群では1回目の妊娠において非妊娠群に比して有意に尿量が増加していることが確認され、出産後には両群の尿量の有意差は消失した。また、妊娠後期のFNDIマウスの視索上核においてAVP hnRNAの発現を解析したところ、非妊娠群に比して妊娠群で有意にAVP hnRNAの亢進を認めた。
妊娠出産を繰り返すことによりAVPニューロンの細胞死が進行したことは、妊娠出産によるAVP代謝の変化がFNDIマウスのAVPニューロンにおいて小胞体ストレスを増加させたことを意味すると考えられる。これまでに部分型尿崩症のモデル動物において妊娠出産の影響を解析した報告はなく、本結果は重要な知見となりうる。さらには、雌性FNDIモデルマウスにおいて妊娠一過性尿崩症を再現することに成功した。これまで妊娠一過性尿崩症を動物実験で解析した報告はなく、本モデルを用いることで未だ明らかとなていない妊娠一過性尿崩症の病態生理に迫ることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗が順調に進展している理由として、研究計画の中で最も時間を要すると考えられる表現型解析、組織学的解析をほぼ完了していることが挙げられる。 具体的には、家族性中枢性尿崩症モデルマウスにおいて妊娠出産を繰り返すことによりAVP分泌が低下していくとともに、AVPニューロンが細胞死に至ることを既に明らかとしている。一方でOTニューロンの脱落は認められなかった。また、家族性中枢性尿崩症モデルマウスにおいて妊娠中の尿量増加が確認され、妊娠中のAVP hnRNAの亢進を認め、妊娠一過性尿崩症を再現する結果が既に得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果として、部分型尿崩症を呈する家族性中枢性尿崩症モデルマウスにおいて妊娠一過性尿崩症を再現することに成功した。妊娠一過性尿崩症の病態としては、①胎盤で産生されるAVPaseにより母体の血中AVPが分解されて多尿に至る可能性、あるいは②妊娠に伴いエストロゲンが亢進することでAVP分泌あるいはAVPの感受性に影響を与える可能性が既報において示唆されている。 今後の実験として、①の可能性について、妊娠中の家族性中枢性尿崩症モデルマウスの末梢血あるいは胎盤組織を採取し、外因性に作成されたAVPペプチドを投与してインキュベーションすることでAVPaseによるAVPのクリアランスの評価を実施する。 ②の可能性について、家族性中枢性尿崩症モデルマウスに浸透圧ポンプを用いてエストロゲンあるいはvehicleを持続皮下投与し、表現型、血中・尿中AVP、AVP hnRNAに及ぼす影響を解析する。
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Causes of Carryover |
妊娠一過性尿崩症の病態を解明するにあたり実験計画の変更が必要となり、今年度予定していたin situ hybridizationやRNA scopeの一部の実験を次年度に計画するよう変更したため、次年度使用が生じた。
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