2023 Fiscal Year Research-status Report
妊娠出産が家族性中枢性尿崩症のバソプレシンおよびオキシトシンに与える影響の解析
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21K16339
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮田 崇 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (10848857)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 家族性中枢性尿崩症 / 妊娠性一過性尿崩症 / バソプレシン / バソプレシナーゼ / AVPase |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠一過性尿崩症の再現実験として、野生型マウスおよび家族性中枢性尿崩症(FNDI)モデルマウスの周産期における尿量の推移を解析した。8週齢の雌性マウスと雄性マウスを交配し、妊娠が成立した雌性マウスにおいて妊娠中および出産後7日目までの尿量を測定した。非妊娠群の雌性マウスは交配を実施せず妊娠群と同期間の尿量を測定した。野生型マウスにおいて、妊娠中の尿量は妊娠群と非妊娠群で有意な変化は見られなかった。一方、FNDIマウスの妊娠群では非妊娠群に比して妊娠中に有意な尿量の増加が確認され、さらに出産後には両群の尿量の有意差は消失した。また、FNDIマウスの妊娠群における妊娠中の尿浸透圧を解析したところ、非妊娠群に比して有意な尿浸透圧の低下が確認された。さらに、妊娠後期のFNDIマウスにおいて、視索上核におけるバソプレシン(AVP)のhnRNAの発現をRNA scopeを用いて解析したところ、非妊娠群に比して妊娠群で有意にAVP hnRNAの亢進を認めた。一方、出産後のFNDIマウスの視索上核におけるAVPニューロン数に変化は見られず、AVPニューロンの脱落は認められなかった。以上より、FNDIマウスでは妊娠中の表現型において妊娠性一過性尿崩症と類似した変化が認められ、妊娠性一過性尿崩症のモデル動物となりうると考えられた。 次に、妊娠中に増加するエストロゲンがAVP分泌に及ぼす影響を解析するため、FNDIマウスにおいて浸透圧ポンプを用いて高用量エストロゲンあるいはvehicleを持続皮下投与したところ、エストロゲン投与群とvehicle群において有意な尿量の変化は見られなかった。このことより、FNDIマウスにおける妊娠中の尿量増加にはエストロゲンは関連しておらず、妊娠経過とともに増加するバソプレシナーゼ(AVPase)により母体の血中AVPが分解されて多尿に至る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の成果として、FNDIモデルマウスが妊娠性一過性尿崩症のモデル動物となりうることが確かめられた。その根拠として、雌性FNDIマウスの妊娠中における尿量の変化、尿浸透圧の変化、AVP hnRNAの変化を捉えることに成功していることが挙げられる。さらに、エストロゲンが妊娠性一過性尿崩症の発症機序に関連していないことが示されたことから、胎盤から産生されるAVPaseにより母体の血中AVPが分解されることが多尿の病態の主体である可能性が示唆され、妊娠性一過性尿崩症の発症機序に迫ることに成功した。 以上の成果より、本課題の進捗が概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021~2023年度の成果として、妊娠出産によるAVP代謝の変化が雌性FNDIマウスのAVPニューロンにおいて小胞体ストレスを増加させ、さらには妊娠出産を繰り返すことによりAVPニューロンの細胞死が進行することを明らかとした。また、雌性FNDIマウスにおいて妊娠性一過性尿崩症の病態を再現することに成功し、妊娠性一過性尿崩症の病態生理に迫ることが可能となった。 2024年度は、これらの実験の再現性をより確かにすべく個体数を増やして実験を繰り返すとともに、AVPaseによるAVPクリアランスの評価系を確立することを目指す。さらに、これらの成果を学会等で発表するとともに、論文投稿を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
妊娠性一過性尿崩症の病態を解明するにあたり実験計画の変更が必要となり、実験の再現性をより確かにすべく個体数を増やしてこれまでの実験を繰り返すとともにAVPaseによるAVPクリアランスの評価系を確立するための実験を次年度に計画し、さらにこれらの成果を次年度に学会等で発表するとともに論文投稿を進めていくように計画変更したため、次年度使用が生じた。
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