2021 Fiscal Year Research-status Report
摂食時間制限が糖脂質代謝を改善する分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K16350
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
辻本 和峰 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (20801525)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エネルギー代謝 / 時間栄養学 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー摂取の時間制限(摂食時間制限)が総エネルギー摂取量と無関係に肥満を改善する分子メカニズムを解明するため、野生型および後天的脂肪細胞特異的Sirt1KOマウスに対して高脂肪食を負荷し、さらに自由摂餌群と1日10時間の摂食時間制限群に分けて4群で比較検討した。野生型マウスでは摂食時間制限によって白色脂肪細胞がベージュ化し、マクロファージ浸潤や炎症性サイトカイン発現の減少が観察されたが、Sirt1KOマウスではそれらの変化は乏しかった。また摂食時間制限は野生型マウスの褐色脂肪組織の脂肪蓄積の減少や熱産生遺伝子の発現亢進を誘導したが、それらはいずれも脂肪細胞選択的なSirt1のKOにより減弱した。さらに、野生型マウスは摂食時間制限によって概日時計を司る遺伝子の発現上昇が認められたが、それらの変化はSirt1KOでは乏しかった。 以上の結果から、脂肪細胞におけるSIRT1は、摂食時間制限により誘導される白色脂肪細胞のベージュ化、慢性炎症の改善および褐色脂肪組織の熱産生亢進に寄与していることが示唆され、時計遺伝子との関連も推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①摂食時間制限を介した白色脂肪組織のSIRT1遺伝子発現の誘導が、全身の糖・エネルギー代謝に及ぼす影響の解明 野生型および後天的脂肪細胞特異的Sirt1KOマウスに対して高脂肪食を負荷し、さらに自由摂餌群と1日10時間の摂食時間制限群に分けて4群で比較検討した。野生型マウスは摂食時間制限によって摂餌量に依存しない体重の低下、白色脂肪組織の重量低下が認められた。組織学的検討により、野生型マウスでは摂食時間制限によって鼠径皮下脂肪組織内にベージュ脂肪細胞が観察され、脂肪細胞分画でUcp1、Pgc1a、Cideaなどの熱産生遺伝子の発現上昇を確認した。一方、Sirt1KOマウスではそれらの変化がいずれも認められなかった。さらに、野生型マウスでは摂食時間制限によって精巣上体脂肪組織の脂肪細胞の小型化や組織炎症の起点となるcrown-like structure(CLS)の減少が観察され、SVFでIL-6、TNFαなどの炎症性サイトカインの遺伝子発現低下が認められたが、Sirt1KOマウスではそれらの変化は乏しかった。加えて、褐色脂肪組織における検討では、野生型マウスは摂食時間制限によって脂肪蓄積の減少、多房性脂肪細胞の増加が認められ、熱産生遺伝子の発現上昇が認められたが、それらはいずれも脂肪細胞選択的なSirt1のKOにより減弱した。
②摂食時間制限によって白色脂肪組織のSIRT1が誘導されるメカニズムの解明 脂肪組織において概日時計を司っているBMAL1遺伝子やReverba遺伝子の発現を確認したところ、野生型マウスは摂食時間制限によってその発現上昇が認められたが、それらの変化はSirt1KOでは乏しかった。さらにSIRT1の基質であるNADの濃度やNAD合成酵素であるNAMPTの発現量についても同様の結果が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験結果から、脂肪細胞におけるSIRT1は、摂食時間制限により誘導される白色脂肪細胞のベージュ化、慢性炎症の改善および褐色脂肪組織の熱産生亢進に寄与していることが示唆された。SIRT1はヒストン脱アセチル化酵素という側面も持ち、遺伝子のエピゲノム制御においても重要な機能を担っているため、脂肪組織の機能向上についてもエピゲノム変化が影響している可能性が高い。今後はSIRT1を介したエピゲノム変化についても解析を進めていく。 ①SIRT1を介した代謝遺伝子のヒストン修飾の検討 脂肪組織の遺伝子についてRNA-seqを用いた網羅的解析を行い、候補となる遺伝子を抽出する。続いてそれらの遺伝子のプロモーターあるいはエンハンサー領域でのヒストン修飾の変化についてクロマチン免疫沈降法を用いて定量評価する。脂肪組織におけるSirt1の酵素活性についても併せて評価する。 ②SIRT1を介した代謝遺伝子のDNAメチル化変化の検討 SIRT1を介してヒストン脱アセチル化を生じた遺伝子において、プロモーター領域でのDNAメチル化状態を評価する。DNAメチル化状態は、バイサルファイトシークエンス法を用いて定量的に評価する。
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