2021 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織に由来するエクソソームmiRNAを介した肝細胞増殖機構の解明
Project/Area Number |
21K16365
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小宮 力 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (60825256)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | miRNA / エクソソーム / NASH / 脂肪組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、研究代表者は、脂肪組織特異的にタモキシフェン誘導性にインスリン受容体を欠損するマウスの肝臓で肝細胞の増殖が促進されることを見出している。 このマウスの血中から超遠心機を用いてエクソソームを回収して初代培養肝細胞に添加したところ、肝細胞のエクソソームの取り込みが確認され、増殖細胞マーカーであるMki67の遺伝子発現が上昇した。血中エクソソームが内包するmiRNAを次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析(miRNA-seq)し、血中エクソソームと肝臓で共通して増加したmiRNAを探索したところ、2種類のmiRNAを同定した。これらのmiRNAは、初期転写産物(pri-miRNA)が肝臓で増加していない一方で脂肪組織で増加していたことから、エクソソームを介して脂肪組織から肝臓に送達された可能性が考えられた。 これらのmiRNAを合成して初代培養肝細胞にトランスフェクションし、Mki67の遺伝子発現が上昇するmiRNAを同定した。トランスフェクションした肝細胞の遺伝子発現を次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析(RNA-seq)すると、多くの細胞周期関連遺伝子の発現が変動しており、一部は脂肪組織特異的にタモキシフェン誘導性にインスリン受容体を欠損するマウスの肝臓でも同様の変化を示していた。 肝細胞の増殖を促進するエクソソームmiRNAの同定に成功したため、初代培養肝細胞で発現が変化した遺伝子についてデータベース情報と照合することでmiRNAの標的遺伝子を明らかにし、肝細胞の増殖が促進される分子機構を解明していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス血清からエクソソームを分離、RNAを抽出し、次世代シークエンサーによりmiRNAを網羅的に解析するまでの一連の工程と、そのvalidationについては、すでに方法を確立していたことから順調に進展した。一方で、マウスから得られる血清は少なく、一回の細胞実験や動物実験で使用するのに必要なエクソソームを準備するのに時間を要した。全体としてはおおむね順調に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したmiRNAをトランスフェクションした初代培養肝細胞で発現が低下する遺伝子をデータベース情報と照合することで、miRNAの標的遺伝子の候補を得る。これらの候補遺伝子について、初代培養肝細胞でsiRNAを用いてノックダウンして細胞増殖に与える影響をmiRNAをトランスフェクションしたときと比較検討することで、エクソソームmiRNAの標的かつ肝細胞の増殖を促進する責任遺伝子と考えられる遺伝子を同定する。この遺伝子の発現を、脂肪組織特異的にタモキシフェン誘導性にインスリン受容体を欠損するマウスの肝臓で検討することで、細胞実験で観察された現象がマウスの個体内でも生じている妥当性を確認する。 また、エクソソームmiRNAの由来を明らかにするために、インスリン受容体に加えて、miRNAを生成するのに必須であることが知られているDicerを脂肪組織特異的にタモキシフェン誘導性に欠損するマウスを作製し、血中エクソソームおよび肝臓のmiRNAを検討することで、肝細胞の増殖を促進するmiRNAが脂肪組織から肝臓に送達されたのかを検証する。 さらに、脂肪組織特異的にタモキシフェン誘導性にインスリン受容体を欠損するマウスの血中から回収したエクソソームや合成miRNAを肝硬変モデルマウスに投与し、病態に与える影響を解析することで、肝細胞の増殖を促進するエクソソームmiRNAが果たす病態生理学的意義について検討していく。
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