2021 Fiscal Year Research-status Report
DNAメチル化酵素の制御による神経芽腫の新規治療法の開発
Project/Area Number |
21K16403
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
青木 啓将 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (70881845)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 神経芽腫 / DNAメチル化 / DNAメチル化酵素 / エピジェネティクス / MYCN |
Outline of Annual Research Achievements |
神経芽腫は白血病、脳腫瘍、リンパ腫にならんで死亡率が高い小児がんである。予後不良群に対しては化学療法、手術、放射線治療などのさまざまな治療法を組み合わせた集学的治療が施行されるが、約半数しか奏功しない上、低年齢時に治療を行うため晩期合併症を患う可能性が高い。以上のことから、難治性小児がんである神経芽腫の有効性が高く副作用の少ない治療法を開発することが待ち望まれている。悪性度の高い神経芽腫細胞ではプロモーター領域に存在するCpGアイランドのメチル化状態が乱れていることが報告されてる。そこで本研究では、神経芽腫の悪性化に関与するDNAメチル化酵素を同定し、その役割を解明することで、新規治療法の開発に繋げることを目的とした。 今年度の研究で以下の成果を得た。 (1)臨床検体のデータ解析により、神経芽腫の悪性度とDNA methyltransferase (DNMT) 1、DNMT3A、DNMT3Bの発現が相関することを見出した。また、MYCNの増幅群でDNMTファミリーが高発現することも明らかとなった。さらに、これらDNMTファミリーの高発現が予後不良因子である事が明らかとなった。(2) DNMT3Bの阻害効果を有するNanaomycin Aが神経芽腫に対して抗腫瘍効果を有する事が明らかとなった。 (3) siRNAによるDNMT3Bのノックダウンは神経芽腫細胞の細胞生存率を減少させた。さらなる解析で神経芽腫細胞にアポトーシスが誘導されていることを見出した。(4) 神経芽腫細胞においてMYCNをノックダウンすることで、DNMT3Bの発現が低下することを見出した。現在はMYCN増幅の有無がDNMT3Bのノックダウンによる細胞生存率に与える影響の解析やRNA-seqによるDNMT3Bノックダウンによる遺伝子発現変化の網羅的解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた通り、今年度の研究においてDNMTが神経芽腫の悪性化に関与することを示唆する複数のデータが得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はDNMT3Bの阻害もしくはノックダウンによる抗腫瘍効果の分子メカニズムを網羅的な解析で明らかにする。また、MYCNによるDNMT3Bの発現制御に関しても詳細な検討を行う。
|
Causes of Carryover |
研究がスムーズに進んだため、試薬購入が想定よりも少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度も主に分子生物学的実験を行っていく予定であり、本研究計画の内容から、細胞培養に使用する器具、培地類、遺伝子やタンパク質発現の解析に使用する分子生物学的実験に使用する試薬の購入が多くなると予想される。従って、次年度使用額はそれらの用途に補填していく予定である。
|