2022 Fiscal Year Research-status Report
難治性小児固形癌に対する新たな免疫ターゲットの探索と治療法の開発
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21K16404
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
洲尾 昌伍 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40771019)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / T細胞不活化分子 / CD200 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児固形癌において患者数の多い神経芽腫においてT細胞抑制分子発現の臨床学的意義を検討している.すでにPD-L1発現における臨床学的意義として,PD-L1発現と再発や生存率との関連を報告した.PD-L1はすでに免疫チェックポイント阻害剤として開発され,現在は広く臨床的にも使用されている.小児神経芽腫においても臨床試験が行われたが,有効な結果は得られていない.神経芽腫では成人腫瘍に比して腫瘍細胞内の遺伝子変異量が少なく,腫瘍抗原が低いため,腫瘍浸潤リンパ球数が少ないことが免疫治療の効果が限定的となる要因として考えられている.そこで今回着目した標的分子はCD200である.CD200は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通型の蛋白で,CD200レセプターにCD200が結合することでT細胞による免疫応答を抑制する.CD200はさまざまな腫瘍細胞上に出現していることが知られており,CD200高発現腫瘍では腫瘍浸潤リンパ球が少ないことが報告されている.神経芽腫におけるCD200発現についての報告は非常に少なく,まだ十分に検討されているとは言い難い.そこで今回神経芽腫生検標本,切除標本においてCD200の発現を評価し,臨床学的意義を検討した.化学療法施行前の生検検体あるいは一期的切除検体は31例あり,31例中CD200高発現群は17例,低発現群は14例であった.統計学的有意差は認めなかったが,CD200高発現群において生存率が低い傾向が見られた(P=0.114).興味深いことにStage4の神経芽腫では80%の症例(15例中12例)でCD200高発現であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経芽腫の切除標本検体が限られており、免疫染色を行う標的分子の絞り込みに時間を要した.文献検索を行い,またいくつかの分子で染色を行ってみたものの,発現が乏しく,今回のCD200にで検討を行うことを決定するまでに時間を要した. 現在は今手元にある神経芽腫標本から未染スライドを作成し,CD200の発現を評価している.過去の報告通り,神経芽腫ではほとんどのスライドが染色されるため,その発現を評価するために何度もスライドを見直し,データを作成した.神経芽腫の切除標本はその量が限られるため,染色条件を決定するために,他腫瘍の標本の免疫染色を施行したり,少数のスライドで染色を行う必要があった. また,今後の神経芽腫標本収集のため,他施設に依頼し,倫理審査を予定している.倫理審査資料の作成と他施設での倫理胃審査に時間を要することが予想される.
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Strategy for Future Research Activity |
現在神経芽腫切除標本をさらに集積中であり、症例数を増やしてさらに検討を行う予定である.他施設に依頼しており,その施設での倫理委審査のため,資料を作成し,審査の依頼を予定している.審査が承認されれば,それぞれの症例の臨床データを抽出する.標本が得られれば,未染スライドを作成し,追加症例分の免疫染色を行い,神経芽腫におけるCD200発現の臨床学的意義を検討する.また,化学療法前後におけるCD200発現の変化を検討し、化学療法抵抗性との関連を評価する予定としている.化学療法前後の標本が得られる症例は限られるため,少しでも症例数を多くするために,他施設への標本委託を行う.データが出そろえば結果を解析し論文作成を行う予定としている.そのための文献検索も同時に行う.
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