2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of molecular mechanism about anti-tumor immune evasion by beta-catenin in hepatocellular carcinoma and its therapeutic application
Project/Area Number |
21K16415
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
下川 雅弘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (80898312)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 抗腫瘍免疫 / β-catenin / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究では、2系統のマウス肝細胞癌(HCC)細胞株(3H3、Hepa1-6)および正常免疫マウス(C57BL/6J)を用いてβ-catenin発現と抗腫瘍免疫との関連を評価した。 まずβ-catenin低発現の3H3細胞においてCas9を用いてCtnnb1のexon3 skippingを行なってこれを過剰発現させた(3H3-C細胞)。一方、β-catenin高発現のHepa1-6細胞ではCtnnb1の片alleleでexon3 skippingが起こっており、Cas13dを用いてexon2/4型mRNAの選択的ノックダウンを行ないβ-catenin発現を抑制した(Hepa1-6-C細胞)。 次にこれらの3H3細胞と3H3-C細胞、Hepa1-6細胞とHepa1-6-C細胞でのRNAシーケンス解析により、β-cateninの発現亢進時および抑制時に変化するサイトカイン・ケモカインを複数同定した。このうち共通項として得られたものについて、今後HCC細胞側で過剰発現や発現抑制させ、免疫細胞への影響を評価する予定としている。 3H3細胞について、β-catenin過剰発現細胞との共培養(平面培養、スフェロイド培養)において、マウス樹状細胞+T細胞による抗腫瘍作用が抑制されることが確認できており、樹状細胞あるいはT細胞単独での各HCC細胞との共培養によりβ-catenin発現と免疫細胞の分化成熟との関連を検討した。今回、Hepa1-6細胞あるいはHepa1-6-C細胞と共培養した樹状細胞について、腫瘍免疫を促進するtype 1および抑制するtype 2への分化成熟をフローサイトメトリーにて評価したが、腫瘍側のβ-catenin発現により免疫抑制的に分化するとの予想に反し、有意な差が得られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の研究では、Hepa1-6細胞について、Cas13dでβ-catenin発現を抑制したHepa1-6-C細胞のマウス皮下移植実験を行なったが、Cas13d/mockを導入したcontrol細胞においても極端に生着率が低下し、β-catenin発現による宿主免疫への影響が評価不能であった。現在原因を究明中であるが、Cas13dの恒常的な発現により抗原性が増して排除されやすくなった可能性が考えられ、Cas13d発現を一過性にしてノックダウンを行うように系を変更し、再度細胞の作成中である。 この抗原性の変化により樹状細胞の分化誘導が不良となったと考えられ、腫瘍細胞と共培養実験した樹状細胞のフローサイトメトリーでtype 1およびtype 2の分化への影響を検出できなかった可能性、および樹状細胞+T細胞との共培養実験でも抗腫瘍作用の有意な差が認められなかった可能性が考えられる。Cas13d一過性発現でのノックダウン細胞作成後にあわせて再実験を行う予定としている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では変異型β-cateninの選択的な過剰発現およびノックダウンにより、oncogenic stress誘導を回避し、あるいはβ-catenin発現を正常化した条件での抗腫瘍免疫を評価できる利点がある。前述のようにCas9やCas13dの抗原性を回避して免疫応答の実験系を確立する事で、Ctnnb1のいずれの標的遺伝子が抗腫瘍免疫に重要な役割を担っているか明らかにできると考えている。変異型β-cateninについて引き続き評価を継続するとともに、野生型β-cateninの強制発現あるいはtotal β-cateninの発現抑制系ともあわせて評価する。その差異の検討はβ-cateninの機能解明にも有用と考えられる。 また変異型β-cateninの選択的な過剰発現および発現抑制のRNAシーケンスで同定されたサイトカイン・ケモカインについて、単独あるいは複数での過剰発現および発現抑制を行い、抗腫瘍免疫への影響の評価を進める。
|
Causes of Carryover |
昨今の世界情勢の影響により購入検討した物品の納期がの遅延が見込まれたため、購入を翌年度に延期いたしました。結果として少額ですが次年度使用額が生じました。
|