2021 Fiscal Year Research-status Report
消化管間葉系肉腫における化学療法後遺残細胞の代謝変化とそのメカニズムの解明
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21K16417
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石田 智 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (60804052)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | GIST / persister cell |
Outline of Annual Research Achievements |
①GIST細胞株を用いて、分子標的治療薬耐性細胞における代謝の変化を明らかにする 細胞内のグルタチオン(GSH)の維持にはNADPHやGSHレダクターゼなどの抗酸化物質が関与している。イマチニブ投与下に培養したGIST遺残細胞ならびに親株におけるNADPH、グルタチオンレダクターゼなどの抗酸化物質における代謝の変化を、生化学的手法を用いて検討を行った。その結果、メタボローム解析によると遺残細胞では糖代謝の低下を認め、特に糖代謝経路の一つであるペントースリン酸回路の副産物であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)ならびに抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)がそれぞれ親株と比較して56.7%、31.8%に低下していることがわかった。また、グルコーストランスポーターであるGLUT1の発現低下を蛍光細胞免疫染色にて確認、さらにGlucose uptake Glo assayを用いて、グルコースの細胞内への取り込みが親株と比較して43.9%に低下していることを確認した。以上のことから遺残細胞では糖代謝の変化に伴い細胞内GSHが低下し、酸化ストレスに対する脆弱性を示す可能性があることが示唆された。 ②遺残細胞における代謝の変化や細胞周期の変化を司るRegulator因子の探索を行う 一般に細胞においてアミノ酸やヘムといった生存に必須な要素が欠乏するなど何らかのストレスがかかった場合、Integrated Stress Response(以下ISR)と呼ばれる防御機構が働き、細胞生存に適した代謝の変化が引き起こされることが報告されている。本年度は、これら遺残細胞と親株を用いてマイクロアレイを用いた発現解析を実施し、現在解析中である。 上記結果をえ、引き続き研究を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切除不能・再発消化管間葉系肉腫(GIST)に対して、チロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブが臨床応用され、高い抗腫瘍効果を示した。しかし一方で、治療後のdormancyな遺残細胞の存在が明らかになり、この細胞がイマチニブ治療の中止を困難にし、またそれに続く二次耐性の出現の一因となると示されてきた。我々は先行研究においてGIST細胞株にイマチニブを一定期間投与することで、dormancyな遺残細胞状態を経たのちに、二次耐性型遺伝子変異を有する耐性細胞が生まれるという実臨床と同様の現象をin vitroにて再現してきた。さらにこのようなdormancyな遺残細胞は、先行研究において、代謝の面からは親株や遺伝子変異を伴う耐性株とは異質な細胞集団であることを示唆するデータを得ている。本研究では遺残細胞がどのように化学療法から逃避し、生き残ることができるのか網羅的に解析を行うことを目的とした。特に、そのメカニズムの一因と示唆される代謝の変化をグルタチオン代謝、糖代謝を中心に解明し、さらにはその機能に基づく新規治療の開発を目的とし、研究を行ってきた。 その結果、現在上記概要の如くその代謝の違い、さらにはその知見を基に新規治療の開発にすすみ、当初の研究計画書記載どおりの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って、引き続き「①遺残細胞における代謝の変化や細胞周期の変化を司るRegulator因子の探索を行う」パートについて研究を継続し、分子標的治療薬での遺残細胞にとって生存のkeyとなる分子を発見する。さらにその新たな知見を基に、「②臨床検体を用いた解析にてin vitroの解析とのcompatibilityを確認する」パートでは、術前化学療法としてイマチニブを投与したのちに切除を行なった切除検体において、免疫染色や生化学的手法を用いてGSHの低下や糖代謝の変化を評価する。 さらに、最終パートである「③遺残細胞に対する標的治療の開発」としては、検索しえた遺残細胞の生存に必要な代謝の変化を司るRegulatorを、遺伝子編集によりノックアウトした際の細胞生存、代謝の変化を解析する。また、同Regulatorを特異的に阻害する化合物を同定し、in vitroにて遺残細胞に対する効果を検証する。 上記計画を実施することで本研究の目的である「遺残細胞がどのように化学療法から逃避し、生き残ることができるのか網羅的に解析を行い、特に、そのメカニズムの一因と示唆される代謝の変化をグルタチオン代謝、糖代謝を中心に解明し、さらにはその機能に基づく新規治療の開発」につなっていくものと考える。 現行、概ね当初の予定通りの進捗であると考える。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、実験と研究の進捗が遅れているため
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