2022 Fiscal Year Annual Research Report
消化管間葉系肉腫における化学療法後遺残細胞の代謝変化とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
21K16417
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石田 智 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (60804052)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | GIST / 遺残細胞 / フェロトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の成果として、イマチニブ投与下に培養したGIST遺残細胞では糖代謝の低下を認め、糖代謝経路の一つであるペントースリン酸回路の副産物であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)ならびに抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)の低下を確認し、酸化ストレスに対する脆弱性を示す可能性があることが示唆された。 2022年度は、上記結果を踏まえ、遺残細胞に対し酸化ストレスを念頭に新規治療法の開発を行った。酸化ストレス誘導剤であるGPX4阻害薬(RSL3)では親株と比して、高い感受性を示すことを確認した(IC50値: 親株62.5nM、遺残細胞8.2nM)。またGPX4阻害剤により遺残細胞で誘導される細胞死はカスパーゼ阻害剤であるZ-VADで阻害されず、また鉄のキレート剤で阻害されることから鉄関連細胞死であるフェロトーシスであると考えられた。 さらに、GIST T1細胞の皮下移植により作成した異種移植マウスを用いて検証を行った無治療群ではPBSを9日間投与、イマチニブ単独治療群ではイマチニブ (100mg/kg)を9日間投与、RSL単独治療群ではPBSを9日間投与後にRSL3(50mg/kg)を単回投与、併用治療群ではイマチニブ (100mg/kgを9日間投与後にRSL3(50mg/kg)を単回投与し、腫瘍の再増殖抑制効果について比較検討した。併用治療群ではイマチニブ単独群に比べイマチニブ中止後の腫瘍の再増殖は有意に抑制されていた( p<0.05)。 これら結果より、イマチニブ投与後の遺残GIST細胞では、細胞周期の休止、糖代謝の抑制を確認した。酸化ストレス誘導剤であるGPX4阻害剤に感受性を示し、その細胞死には、フェロトーシスの関与が強く示唆された。動物実験においてもイマチニブに併用するGPX4阻害剤は治療効果を認め、新規治療として臨床応用が期待される。
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