2021 Fiscal Year Research-status Report
凍結保存による同種静脈グラフトの抗原性変化・組織障害に関する検討
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21K16441
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市田 晃彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20897582)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凍結同種静脈グラフト / 免疫組織学的検討 |
Outline of Annual Research Achievements |
当院で肝移植手術や血行再建を要する肝胆膵外科手術において用いてきた凍結同種静脈グラフト(ホモグラフト)は,これまでの使用経験から, 抗凝固療法が不要であり, 感染症に対する抵抗性が強く, また免疫抑制療法が不要という利点があると考えている。今回, 静脈ホモグラフトを実際に移植することでどのような変化が起こるか, 病理組織学的・免疫組織学的検討を行うこととした。またコントロール群として, 実際の臨床で使用しなかった静脈ホモグラフトと比較・検討することとした。 まず、倫理審査を受け, 承認を得た。また本研究では実際の臨床で使用しなかった静脈ホモグラフトも研究対象となることから, 日本組織移植学会へも研究の紹介を行い, 2022年4月25日の段階では同学会適正利用審査委員会にて審査中である。 続いて本研究で検討する症例の選定を行った。1998年~2021年11月に東大組織バンクから当科・共同研究機関へ提供され, 肝移植・肝胆膵外科手術で用いられた約624例(肝移植529例・肝胆膵外科手術95例)の中から, 再手術でホモグラフトの摘出が行われたり, 剖検が行われた症例で検討が可能な症例を15例程抽出した。 また本研究では前向き研究として, 研究実施期間中に研究対象となり得る症例が確認された場合も検討が行えるように, 倫理委員会へ申請し承認を得た。 次に, 実際に検討する病理組織学的・免疫組織学的検討項目について, 当院の心臓血管外科・病理部と相談し, 組織染色ではHE・Masson trichrome染色にて内腔における内皮細胞の残存・新生内膜の形成・炎症や石灰化の有無, Alcian blue・Elastica van Gieson染色にて血管内の弾性線維・結合組織の評価を行うこととした。また免疫染色では, CD31・Factor Ⅷ染色にて血管内皮細胞の観察を行う方針とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京大学組織バンクや各分担施設と連携しながら順調に研究が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
3月下旬に前向き研究第一例目として剖検時に観察部位の切り出し, パラフィンブロックの作成を行った。 第一例目は, アルコール性非代償性肝硬変に対して, 生体部分肝移植を実施後グラフト不全に陥り,術後57日に永眠された症例であった。組織染色では, HE・Elastica van Gieson染色にて, ホモグラフトと右肝静脈・下右肝静脈の吻合部において, 拒絶を示唆する顕著な炎症細胞浸潤は認めなかった。中膜主体の変性壊死と線維化がみられ, 閉塞が疑われた下右肝静脈との吻合部においてその程度が強い傾向があった。免疫染色ではCD31・Factor Ⅷ染色にて血管内皮細胞の観察を行うこととしている。また本症例において, 2022年8月6日に予定されている第20回日本組織移植学会総会・学術集会にて報告を行う予定である。 また6月に共同研究機関である埼玉医科大学総合医療センター肝胆膵外科において3症例, 日本赤十字社医療センターにおいて6症例の検体切り出しからパラフィンブロックの作成を行った後, 組織・免疫染色を実施する予定としている。 同時に日本組織移植学会倫理委員会の承認を得た後, 臨床で使用しなかった静脈ホモグラフト(5人のドナーから提供された腸骨静脈・下大静脈・門脈・上大静脈・大腿静脈)において, パラフィンブロックの作成, 同様の染色を実施し比較・検討を行う。 全症例の染色を終えたところで, 抗凝固療法が不要であり, 感染症に対する抵抗性が強く, また免疫抑制療法が不要であるという利点におけるメカニズムの解明につならる所見の確認を期待している。 更には, 移植後治療成績の改善, 静脈ホモグラフトを用いた外科的治療の普及・発展につながることを期待している。
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Causes of Carryover |
免疫染色など、多額の研究費を要する研究が次年度に持ち越されたため。次年度に組織学的な評価が必要な項目、症例を絞り込み免疫染色や特殊染色の際に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)