2022 Fiscal Year Research-status Report
凍結保存による同種静脈グラフトの抗原性変化・組織障害に関する検討
Project/Area Number |
21K16441
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市田 晃彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20897582)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 凍結保存同種静脈グラフト / 組織学的評価 / 抗感染性 / 拒絶反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京大学組織バンクから1998年から2021年に凍結保存同種静脈グラフト(以下、ホモグラフト)を提供した件数は731件であった。これらの症例において、実際にホモグラフトの移植が行われたが再手術でグラフトの一部が摘出されたり、剖検が行われホモグラフトの組織学的な観察が可能となった症例をピックアップした。肝移植で使用された529件のうち、過去に東京大学医学部附属病院で剖検が行われたり、再肝移植の際にホモグラフトが摘出された症例は3例であった。また、研究期間中に剖検が行われた症例が4例あった。また、他院で剖検、もしくは再肝移植の際に摘出された症例は7例であった。肝移植以外に肝胆膵外科手術においてホモグラフトが使用された95例のうち、剖検もしくは再手術でホモグラフトの摘出が行われた症例は3例であった。これら合計17例のホモグラフトを組織学的に評価できるよう、スライド作成や免疫染色を行った(HE染色、EVG染色、CD31染色など)。また、比較検討のために、使用期限切れなどで使用されなかったホモグラフト19例においてもスライド作成・免疫染色を行った。これらの観察の結果、ホモグラフトは凍結保存・解凍後も血管の組織学的構造が保たれ、内皮細胞もほぼ残存していることがわかった。実際に移植が行われた17例の観察では移植後もホモグラフトの血管構造は保たれており、細胞の生存が確認された。動脈ホモグラフトで見られるような内膜肥厚、中膜壊死、外膜側からの炎症細胞浸潤は軽度であり、強い拒絶の所見は見られなかった。内皮細胞は13例で残存していた。経過中に閉塞してしまったホモグラフトでは細胞性は保たれず、中膜主体に壊死・線維化が見られた。実臨床でホモグラフトを使用し、抗凝固療法が不要で感染症に強く免疫抑制療法が不要、という利点があると感じていたがそれを裏付ける組織学的所見が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
未使用の静脈ホモグラフトを観察した結果、内皮細胞の厚さや血管の構造は部位ごとに異なることが判明した。そのため、未使用ホモグラフトの観察症例数を増やして部位ごとに所見を比較検討する必要があると考えた。そのため、観察するグラフトの選択や準備に時間を要し、研究が遅れることとなった。そのため、学会発表や論文発表は今後準備を進めて行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた知見について学会発表を行う。その結果をまとめ、論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
前述のように未使用ホモグラフトの検討症例数を増やした影響で研究に遅れが生じた。そのため、本研究で得られた主な知見を今後、学会および論文で発表する予定である。そのため、次年度に学会参加費、交通費、宿泊費、英文校正費用、論文投稿費などが必要になった。
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Research Products
(3 results)