2021 Fiscal Year Research-status Report
力学的及び電気生理学的に成熟型となる心筋組織のin vitro培養法の確立
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21K16494
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笹井 雅夫 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (70598680)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心筋成熟化 / 回転浮遊培養 / 培養法開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工多能性幹細胞(iPSC)から分化誘導された心筋細胞は未熟型であることから、当該心筋細胞を薬剤評価に活用したり、再生医療として細胞治療に用いたりと、最適であるかどうかは疑義に生じる状態である。現状では、心筋をin vitroで成熟化させる培養法はなく、本研究ではその培養法の開発を目指して、本年度は2つの培養法を複合させる条件検討に取組んだ。1つは心筋細胞が環状となる培養によりTraveling waveを引き起こし、電気的な刺激により成熟を促す方法と、回転浮遊培養によるShear stressを与え、物理的な刺激により成熟を促す方法である。両者を組み合わせて成熟をより促すことができるかを検討した。なお、コントロールとして、心筋細胞が環状とならない培養基材を用いた培養も同時に並行させた。検討条件として、Traveling waveを引き起こす培養及び培養期間を検討した。なお、回転浮遊培養はShear stressにより、培養基材から剥がれるため、一定期間の静置培養を必要とする。そのため、まずはTraveling waveによる培養を行った上で、回転浮遊培養系に移行することとした。 培養基材にはポリ乳酸コグリコール酸(poly(lactic-co-glycolic acid):PLGA)のナノファイバーを用いた。PLGAナノファイバー上に、iPSC由来心筋細胞(cTnT陽性細胞率として57.2%~87.0%)を播種し、3,7,14日後にMotion Analyzerによる拍動の解析(拍動回数、収縮及び弛緩の程度)を行った。14日後に回転浮遊培養系へ移行し、1週間の回転浮遊培養を行った。培養細胞を取り出し、RNA抽出による心筋成熟度の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工多能性幹細胞(iPSC)から心筋細胞へ大量の細胞を分化誘導する際には、多くの試薬、培地、培養器材を用いる。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、主に培地及び培養器材の入荷が滞り、本研究の検討に用いるiPSC由来心筋細胞の培養に支障をきたした。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると考えるものの、1回の培養で検討できる条件や、検討回数に制限が生じたため、結果の検証に課題が残っている状況と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、Traveling wave及び回転浮遊培養による心筋成熟度の評価を継続して実施する。培養法の違いによる心筋成熟度の影響や、心筋細胞から分泌される液性因子のプロファイルの変化を、ELISAで測定する。加えて網羅的なRNA解析による遺伝子発現パターンの変化等も検討項目として組み入れ、心筋成熟に関連するシグナル伝達や作用メカニズム解析につながる可能性も検討する予定である。また、電子顕微鏡観察による微細構造の変化の有無、ミトコンドリア機能の変化についても、解析項目として実施を検討する。また、可能な限り短期的に成熟を促すことを目標とするため、Traveling waveによる培養期間の短縮(3、5、7日)、回転浮遊培養の条件検討(回転数によるShear stressの強度を調整等)を重点課題として実施する。また、他の研究グループから報告された心筋成熟化に関連すると言われているエストロゲン関連受容体γ(Estrogen-related receptor gamma:ERRγ)のアゴニストの添加等で、相乗的に心筋成熟化が促進されるかどうかの検討も行いたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による全国的な培養試薬及び資材の供給不足により、人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞の培養頻度が低下したことにより差額が発生した。iPSCの培養や、心筋細胞への分化誘導には多数の試薬や培養液を用いるため、次年度の培養関連試薬等で活用する。また、次年度は網羅的な遺伝子発煙解析を複数検体を活用して実施する計画で、その解析にも活用する予定である。
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