2022 Fiscal Year Research-status Report
力学的及び電気生理学的に成熟型となる心筋組織のin vitro培養法の確立
Project/Area Number |
21K16494
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笹井 雅夫 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (70598680)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心筋成熟化 / 回転浮遊培養 / 培養法開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工多能性幹細胞(iPSC)から分化誘導された心筋細胞は未熟型であることから、当該心筋細胞を薬剤評価に活用したり、再生医療として細胞治療に用いたりと、適した細胞の性質を有しているかどうかは疑義が生じる状態である。本研究では心筋成熟の培養法の開発を目指して、2つの培養法を複合させる条件検討及び評価に取組んだ。1つは心筋細胞が環状となる培養によりTraveling wave(TW)を引き起こし、電気的な刺激により成熟を促す方法と、回転浮遊培養によるShear stress(SS)を与え、物理的な刺激により成熟を促す方法である。両者を組み合わせて成熟をより促すことができるかを検討した。なお、コントロールとして、心筋細胞が環状とならない培養基材を用いた培養も同時に並行させた。検討条件として、TWを引き起こす培養及び培養期間を経て、その後、回転浮遊培養によるSSを与える培養プロセスにより、得られた細胞の特性を評価した。 培養基材にはポリ乳酸コグリコール酸(PLGA)のナノファイバーを用いた。PLGAナノファイバー上に、iPSC由来心筋細胞(cTnT陽性細胞率として64.2%~91.2%)を播種し、3,5,7日後にMotion Analyzerによる拍動の解析(拍動回数、収縮及び弛緩の程度)を行った。7日後に回転浮遊培養系へ移行し、1週間の回転浮遊培養を行った。培養細胞を取り出し、ELISA、形態観察(免疫染色)、電子顕微鏡観察、細胞代謝物プロファイリングによって心筋成熟度の評価を行った。その結果、拍動に関してTWを引き起こすことで拍動回数と収縮速度の向上傾向が見られた。一方でサイトカイン産生能は類似しており、大きな変化が見られなかった。細胞代謝物プロファイリングではSSを加えることで細胞内のGlucoseやTCA回路に関連する因子が多く検出されたことから、心筋成熟が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人工多能性幹細胞(iPSC)から心筋細胞へ大量の細胞を分化誘導する際には、多くの試薬、培地、培養器材を用いる。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、主に培地及び培養器材の入荷が滞り、本研究の検討に用いるiPSC由来心筋細胞の培養に支障をきたした。また、iPSC由来心筋細胞がPLGAナノファイバーに生着しない事態が発生し、そのため、評価に用いる心筋細胞の培養の回数が減少し、結果の検証に課題が残っている状況と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に得られたRNAを検体として、網羅的なRNA解析を実施する。それらの結果と、これまでに得られたELISA、細胞代謝物プロファイリング、免疫染色による形態観察画像、電子顕微鏡観察画像の結果から、どの因子の変動が得られた結果の差異に寄与したのかを文献的に調査して考察する。
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Causes of Carryover |
次年度は網羅的なRNA発現解析を、複数検体を活用して実施する計画で、その解析にも活用する予定である。
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