2021 Fiscal Year Research-status Report
ECMO管理における目標指向型体外循環管理の有効性の検討
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21K16502
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
向田 宏 順天堂大学, 大学院医学研究科, 非常勤助教 (10865679)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ECMO / 人工心肺 / 酸素需給バランス / 酸素供給量 / 心臓手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存ECMOシステムに体外循環用血液学的パラメータシステム(連続的血液ガス分析装置)を設置した。ECMOシステムから得られる灌流量と体外循環用血液学的パラメーターシステムから得られた測定値を自動記録装置へ各種データを取り込めるようにシステム改良を開始した。また、開心術の人工心肺における自動記録装置からもECMOシステム改良後に得られるデータと同様になるように改良を行った。 当院において成人開心術症例のうち、術後ICDSCスコアによるせん妄評価を受けた患者を対象とした。人工心肺中の酸素需給バランスパラメータと術後せん妄に関して225名を調査した。せん妄(ICDSCスコア≧4)は9名(4%)、せん妄予備群(ICDSCスコア1から3)は163名(72.4%)、非せん妄(ICDSCスコア=0)は53名だった。年齢は3群間で有意差を認めなかったが(p値=0.193)、ICDSCが高いほど体表面積(平均;m2)は小さく(1.51, 1.62, 1.68; p=0.014)、術前ヘマトクリット値(平均値;%)は低かった(34.0, 38.4, 38.9; p=0.016)。一方では、ICDSCスコアが高いほど人工心肺灌流量(中央値;L/min/m2)は高い結果であった(2.86,2.78,2.72; p=0.012)が、人工心肺中の最低ヘマトクリット値(中央値; %)はICDSCスコアが高いほど低い結果であった(21,22, 23; p=0.048)。人工心肺中の酸素供給量(中央値;mL/min/m2)は各群で有意差を認めなかった(49.1,339.9,341.8;p=0.48)。また、ICDSCスコアが高いほど人工心肺中のヘマトクリット値が25%を下回った時間が有意に長かった(58,31.7,18.3;p=0.021)。多変量解析においては年齢(p=0.049)と人工心肺中のヘマトクリット値が25%を下回った時間(p=0.023)がせん妄の予測因子であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工心肺中の酸素需給バランスとICDSCスコアによるせん妄との関連性について検討し、脳の機能障害と人工心肺との関連を調査した。当初の予想通りの解析結果であり、人工心肺中の低灌流と低酸素における脳障害を定量的に評価するためさらなる検討が必要である。また、ECMOでは自己心拍があるため、体外循環の灌流量と患者自身の心拍出量をどのように解析、検討していくかということが課題にあり、現在検討中である。 一方でECMOシステム改良について、臨床使用中の期間が長く、改良に着手することが遅れたが、R3年度中には完了したため、おおむね順調である。一部、データの取り込みに関して調整が必要であるが、今後修正していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年の検討では人工心肺中のヘマトクリット値がせん妄群で有意に低かったが、灌流量は有意に高く、酸素供給量としては各群では有意差を認めなかった。人工心肺中の灌流量を高く保っていても、人工心肺中のヘマトクリット値が低いとせん妄のリスクである可能性が考えられる。これは低いヘマトクリット値を灌流量で代償することを目的とした「酸素供給量を維持する体外循環管理」のコンセプトから逸脱した結果であった。今後の検討として、人工心肺中の低灌流、低酸素状態を定量的に評価できるバイオマーカによる解析を進めていく予定である。また、開心術における人工心肺とECMOの体外循環では自己心拍の有無や施行時間が大きく異なるため、体外循環中の低灌流や低酸素の影響が異なると考えられ、今年度はこれらの点にも着目して解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
バイオマーカー測定ELISAキットの購入を当該年度予定していたが、検体数が一定程度収集できてからでも研究の進捗状況には大きな影響はないと判断し、ELISAキットの購入をR4年度へ繰り越した。検体数の推移を確認しながらR4年度購入する予定である。また、結果をまとめて学会発表および論文作成にも予算を充てる予定である。
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