2021 Fiscal Year Research-status Report
Single-cell Whole-transcriptome Analysis in Rat Basal Forebrain for Elucidating the Molecular Mechanism in Postoperative Delirium
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21K16533
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
紺野 大輔 東北大学, 大学病院, 助教 (20876479)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 術後せん妄モデル / マウス敗血症モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2021年度計画は,C57Bl/6系雄性マウスを用い,イソフルラン吸入麻酔下に下腹部を手術したマウス(PODマウス群:N=15)およびエンドトキシン投与によるマウス敗血症モデル(N=10),無処置のマウス(無処置群:N=10)で,高架式十字迷路試験およびオープンフィールド試験により,せん妄様行動を定量評価することであった. 高架式十字迷路とは,壁のないオープンアームと壁があるクローズドアームが向かい合った形で十字をなしている行動実験用迷路である.迷路の中央部にマウスを置くと,不安の多いマウスは,暗くて狭いクローズドアームでの滞在時間が長くなり,不安の少ないマウスの場合,明るいオープンアームでの探索行動が多くなる.手術直後のマウスは疼痛により行動量こそ減るが,オープンアーム滞在時間/クローズドアーム滞在時間比は,無処置マウス群に比べて長くなる傾向が見られた.つまり,感じるべき不安を感じにくくなっており,認知機能が変化することが確認できた.3月末現在,この現象が一過性であり,数日かけてベースラインである処置前まで戻ることを評価中であり,可逆性が確認できれば,認知機能障害が一過性で,手術麻酔の影響であるといえ,モデルが完成すると考えている. コロナウィルス感染症の蔓延に伴い、集中治療医である研究責任者は、集中治療室におけるコロナ患者対応に追われ,十分な研究時間を確保をすることができなかったが、C57Bl/6系雄性マウスを用い、PODマウス群,マウス敗血症モデルを作成するべく実験を継続している.若干の遅れが生じてはいるが,実験はおおむね遂行できている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究担当者は集中治療医として東北大学病院集中治療室に勤務している.コロナウィルス感染症の蔓延に伴い、集中治療室におけるコロナ患者対応に追われ,十分な研究時間を確保をすることができなかった
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の計画であるが,当初2021年度に計画していた動物モデルの作成を継続する.その後,当初の予定通りPODマウス群(N=3)と無処置のマウス群(N=3)から前脳基底部を脳地図に沿って切り出し酵素で単離して5,000個以上の細胞を得る.その細胞懸濁液を,Chromiumシステム(10XGenomics社)を用いて,1細胞ごとに油脂で包み分離させ,次世代DNAシークエンサーを用いて,1細胞あたり50,000リードの読み取り深度で,およそ40,000種類のすべてのmRNA配列をシークエンスする.データ解析はCell Rangerを用いる.STARでマウス参照ゲノムmm10にマッピングし,cellranger countで遺伝子発現データを定量する.aggrでPODマウス群と無処置群のデータを結合させ,既知のマーカー遺伝子で細胞集団のクラスタリングをt-SNEプロット法で行う.さらに個々の細胞のプロット上でのユークリッド距離を元に,PODにより起こるクラスタリングの変化を同定する.この解析によりPODに関与するクラスター,クラスター内の遺伝子発現特性が変動した細胞,それを同定する新たなマーカー遺伝子(PODマーカー)を同定ことができる.申請者はコリン作動性ニューロンの一部と希突起膠細胞,マイクログリアのPODとの関与と数種類のPODマーカーが検出できると予想している. コロナウィルス感染症患者は依然多いが、重症者は減少しており,実験時間は2021年度に比べて多く確保できると算段している.
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Causes of Carryover |
東北大学病院集中治療部所属である研究担当者は,コロナウィルス感染拡大に伴う医療ひっ迫に対し,研究日を返上して患者治療に尽力する必要があった.重症COVID19患者には非常にECMOをはじめとした集約的な医療が必要で,その技術と知識と経験を持ち合わせた医師は非常に少なく,研究担当者が率先して患者治療にあたる必要があった.そのため,一部研究進捗に支障をきたし,研究が進まない箇所があったため,マウス等の購入や旅費に用いるはずの研究費を使用できていなかった. コロナウィルス感染第6波以降の重症患者減少傾向に伴い,当初の計画通りに研究遂行が可能となりつつある.よって2022年以降に,当初2021年度に計画していた実験を行うこととなるため,研究費を次年度使用を必要としている.
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