2021 Fiscal Year Research-status Report
オピオイドへの耐性形成や副作用発現におけるユビキチン修飾の意義と分子機構の解明
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21K16547
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 覚司 京都大学, 医学研究科, 助教 (80802793)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オピオイド受容体 / 耐性形成 / 受容体内在化 / 翻訳後修飾 / ユビキチン修飾 / リン酸化修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、μオピオイド受容体(MOR)へのユビキチン修飾が、リガンド刺激によって起きるMORの受容体内在化や細胞内シグナルの活性化において果たす役割を解析した。細胞外領域のN末端側にHemaggulutinin(HA)配列を付加したMOR1遺伝子を改変し、ユビキチン修飾の標的となる細胞内領域の8つのリシンを全てアルギニンに置換したHA-MOR1-8K/R変異体を作出した。 まず、HA-MOR1及び8K/R変異体をヒト神経芽細胞腫・SH-SY5Y細胞に強制発現して受容体内在化を評価した。合成エンケファリン(DAMGO)で刺激し、細胞表面からのHA抗原の消失の程度をFlow cytometerで計測した。8K/R変異体は、刺激10分後において、野生型MOR1と比較して受容体の内在化が顕著に減少したが、60分後にはその差は軽減した。一方、MOR1が受ける複数のリン酸化のうち最も上流のSer377へのリン酸化は、MOR1-8K/R変異体と野生型MOR1で同程度であった。つまりMOR1へのユビキチン修飾はリン酸化に続いて生じる反応で、内在化の効率を制御している可能性が示唆された。 次に、HA-MOR1とHA-MOR1-8K/R変異体をHEK293細胞に強制発現し、MOR下流で活性化する代表的なシグナルであるMAPKの活性化を評価した。SH-SY5Y細胞では、内在性のMORからのシグナルが無視できない程度に大きいため、ここではHEK293細胞を利用した。DAMGO刺激によって、MOR1-8K/R変異体は野生型MOR1と同程度にMAPK経路を活性化した。 これらの結果から、MOR1へのユビキチン修飾は、Gi/oの活性化やそれに続くGPCRキナーゼによるMORのリン酸化に引き続いて生じる翻訳後修飾であり、受容体の内在化の効率を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、研究計画初年度のうちに、HA-MOR1やその遺伝子変異体を発現した細胞株をDAMGOやモルヒネで刺激し、活性化した受容体を免疫沈降して、受容体のユビキチン修飾の程度をウェスタンブロッティング法によって定性的に評価することを目標としていた。しかし、MOR1を免疫沈降してウェスタンブロッティング法によって検出することはできたが、受容体のユビキチン化を評価することはできなかった。先行研究を参考にしながら、実験方法を何通りも検討したが、定性的にMOR1へのユビキチン化を評価するには至らなかった。代替となる実験として、E1阻害剤を利用して8K/R変異体と同様の実験結果が得られるか確認したところ、E1阻害剤によっても受容体の内在化の効率が低下することが確認された。MOR1-8K/R変異体を用いて確認された実験結果は、MOR1へのユビキチン修飾が行われないことによる可能性を間接的にではあるが、示唆しているものであると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
βアレスチン1および2、またその両者を同時に欠損したSH-SY5Y細胞はすでに樹立しており、また、MOR1のリン酸化修飾の標的となる11のセリン・トレオニンを全てアラニンに置換し、リン酸化を受けない変異体11S/T-A変異体はすでに樹立していることから、HA-MOR1のユビキチン化修飾を定性的に解析する条件検討が整い次第、研究計画に従って次年度以降の計画を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)