2021 Fiscal Year Research-status Report
電気生理学的手法を用いた内因性疼痛抑制能の測定法の確立
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21K16558
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
絹川 友章 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90742320)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | CPM / DNIC / 内因性疼痛抑制 / 下行抑制系 / 慢性痛 / Blink Reflex |
Outline of Annual Research Achievements |
CPM効果は侵害刺激から遠隔部位に条件刺激として温冷刺激を与えると、侵害刺激による主観的疼痛レベルが低下する現象である。CPM効果の低下と慢性痛(繊維筋痛症、変形性関節症、頭痛、過敏性腸症候群等)と周術期における術後遷延痛には関連があることが報告されており、臨床的に重要な検査となりつつある。 現行のCPM測定法では特殊な圧刺激装置を使用することや、2週間に渡って2回測定する必要があるなど、実臨床に用いるには課題がある。しかし最も重要な問題は、加える刺激が特異的侵害刺激ではないことと、評価するのが主観的痛みのみであることである。そのため、簡便かつ客観性に優れた痛覚特異的CPM測定の方法の確立が望まれていた。 今回、我々は侵害受容刺激に表皮内電気刺激法(Intra-Epidermal Stimulation:IES)を用い、評価法として主観的痛みに合わせて瞬目反射(BlinkRefelex)を用いることで、客観的に評価できる測定法を確立した。IESはコントールが用意で携行性に富んでおり、選択的に痛覚のみ刺激できる。また瞬目反射は脳幹反射であり随意に影響されない。瞬目反射における筋電図のR2成分を積算し、CPM効果の指標とした。本研究のパラダイムでは計3セッションで行っているが、条件刺激の有るセッションとないセッション、合計2セッションで施行しても再現性に問題なく、この場合1人の被験者あたりの測定には10分程度で完了できる。 さらにCPM効果の新たな測定法を確立しただけでなく、CPM効果の触覚における発現についても評価を行った。触覚においても、痛覚同様CPM効果は発現するが、両者を比較すると、痛覚に有意に強く発現する現象と判明した。このことは、従来提唱されていたDNIC(diffuse noxious inhibitory controls)の概念と矛盾しない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CPM測定の客観的かつ簡便な計測方法を確立した。手法としては表皮内電気刺激法を用いることで痛覚刺激に客観性を持たせ、疼痛指標としては従来の主観的痛みだけでなく、瞬目反射の筋電図を計測することで客観性を担保した。パラダイムとしては、コントロール1,2セッション目とテスト刺激のある3セッション目で、合計3セッションとしたが、1,2セッション目に解析上データに有意差はなかったので、コントロール1セッション目、テスト刺激のある2セッション目として、合計2セッションで評価できると判明した。この場合、評価に合計10分程度だれば完了できる。また、CPM現象における、痛覚刺激、触覚刺激における発現の仕方についても調査を行い、このCPM現象が痛覚刺激、触覚刺激ともに発現するものの、痛覚刺激に対して有意に強く発現することも解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
疼痛学の分野では、近年カプサイシンについて盛んに研究が行われている。 カプサイシンはTRPV1チャネルを活性化することで灼熱痛を生じる。一方でカプサイシンの刺激が繰り返されるとTRPV1チャネルを介して細胞内に流入したカルシウムイオンにより、TRPV1チャネルが脱感作し、かえって痛覚鈍麻を生じるとされている。北米ではカプサイシンクリームが鎮痛剤として承認・発売され、臨床使用されている。ただし、カプサイシンクリームの効果については議論の的となっており、低濃度のカプサイシンクリームについては鎮痛効果は否定的な意見が多い。一方、高濃度となると、カプサイシンの全身作用により、消化器症状や高血圧症、流涙、鼻汁等の様々な問題が生じる。 本研究にて確立したCPM測定法で、カプサイシンクリームを条件刺激に組み込み、カプサイシンの鎮痛効果の有無と、鎮痛効果を得るための至適濃度について今後、調査・研究することを検討している。
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Causes of Carryover |
今後も学術集会・研究会・紙面上での発表を通して多くの研究機関・医療施設へ働きかけし、CPM評価を一般化し、慢性痛・周術期の疼痛治療に臨床応用されるように進めていく。また、またCPM効果については性差がある可能性が指摘されており、この点について調査するためには今後もデータを蓄積していく必要がある。さらに、先述したカプサイシンについての鎮痛効果をCPM現象によって評価するためには、条件刺激をカプサイシンとしたパラダイムで追加調査を今後もしていく必要がある。
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Research Products
(2 results)