2022 Fiscal Year Research-status Report
敗血症関連脳障害に対する早期運動療法の可能性ー海馬シナプス応答解析を中心に
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21K16583
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
干野 晃嗣 北海道大学, 大学病院, 助教 (40802434)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 敗血症関連脳症 / 敗血症 / 海馬 / シナプス可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度に、盲腸結紮穿孔(cecal ligation and puncture: CLP)により敗血症を誘導したマウスにおいて、運動療法により海馬BDNFの上昇、生存率の改善が認められることが示されたため、引き続き海馬シナプス可塑性の変化について検討した。マウスを盲腸結紮穿孔を行わないsham群、盲腸結紮穿孔を行うCLP群に分け、それぞれにおいて運動療法を行うexercise群、運動を行わないsedentary群に分け、4群で実験を行った。運動はマウス用トレッドミルを用いて、8m/minの速度で毎日30分間、計7日間行った。術後7日目に海馬を取り出し、急性スライスを作成して電気生理学的に興奮性シナプス後電位を導出し、theta-burst stimulationをもちいてlong-term potentiation (LTP)を誘導してシナプス可塑性を評価した。CLP+sedentary群では、late-phase LTP (L-LTP)と呼ばれる後期シナプス可塑性が低下していたが、運動療法によりCLP+exercise群では、sham+sedentary群と同程度にまでL-LTPが改善していることが示された。LTPは記憶や学習の細胞学的モデルと考えられていることから、この結果は、敗血症関連脳症において運動療法が有効であることを示唆していると考えられた。 また、CLP群ではsham群と比較し、オープンフィールド試験において活動性が低下していることが前年度に示されていたが、運動療法による改善は認められなかった。従って、活動性が両群で異なるため、海馬依存性記憶を評価する行動学実験であるfear conditioning testは実施しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
敗血症マウスにおいて、運動療法による海馬BDNFの改善、生存率の改善、シナプス可塑性の改善を示すことができており、当初の仮説に近い結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、運動療法による海馬BDNFの改善とシナプス可塑性の改善の関連を示すために、BDNF製剤や拮抗薬を用いた電気生理学的検討を予定している。 また、運動の強度による違いも検討し、その後発表成果を論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度使用を予定していたBDNF拮抗薬を購入せず、令和5年度に使用する予定としたため、その分の繰越金が生じた。令和5年度すぐに当該試薬品は購入する予定であり、実験計画に変更はない。
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