2021 Fiscal Year Research-status Report
DIF-1によるMycを標的とした新たな髄芽腫治療研究
Project/Area Number |
21K16634
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
伊藤 寛 佐賀大学, 医学部, 助教 (50795375)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Medulloblastoma / Myc / DIF-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
髄芽腫(Medulloblastoma; MB)は代表的な小児悪性脳腫瘍であり進行が早く、脊髄を含む中枢神経系に播種性に進展することが特徴である。近年、MBの全ゲノム解析が行われ、遺伝子分類(WNT活性化タイプ、SHH活性化タイプ、Group3、Group4)が行われた。このうちドライバー遺伝子が明らかとなっていないGroup3/4は高率に転移・播種をきたし予後不良である。さらにMYC/MYCN遺伝子の増幅・過剰発現があるMBは予後不良であり、治療標的として注目されている。 我々はこれまでに、悪性脳腫瘍である膠芽腫(Glioblastoma:GBM)の増殖を抑制する血液脳関門を通過する新たな治療薬候補としてDifferentiation inducing factor-1(DIF-1)を見出した。DIF-1はDyctiostelium discoideumの形態分化に関わる物質であり、最近ではその抗腫瘍効果が報告されている。DIF-1のMBの新規治療としての可能性を検証している。 MYC遺伝子増幅の有無両方のMB細胞株を選定し、そのMyc発現を検証した。 すでにBET-bromodomain阻害(BETi)によりMyc増幅MB細胞増殖が抑制されることは報告されていたため、BETiであるJQ1とDIF-1の細胞増殖抑制効果を検討した。DIF-1はMB細胞の増殖を効果的に抑制し、かつDIF-1をMB細胞株に処理し、c-Myc、n-Myc発現が減弱することも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MYC遺伝子増幅を有さないMB細胞株としてDaoy、D283をMYC遺伝子増幅を有するMB細胞株としてD341、CHLA-01-MEDを選定した。 Western blottingにてD341、CHLA-01-MEDが多細胞株に対して高いc-Myc発現を有していることとCHLA-01-MEDに関してはn-Myc発現を有することを確認した。 すでにBET-bromodomain阻害(BETi)によりMyc増幅MB細胞増殖が抑制されることは報告されていたため、BETiであるJQ1とDIF-1の細胞増殖抑制効果を検討した。DIF-1はMB細胞の増殖を効果的に抑制した。 また、DIF-1をMB細胞株に処理し、c-Myc、n-Myc発現が減弱することも明らかにした。加えて、DIF-1はMB細胞の生存増殖にかかわるAKT経路やMAPK経路を抑制することも明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、DIF-1がMYC/MYCN増幅のMB細胞の増殖抑制効果の機構を明らかにする。増殖抑制効果はアポトーシスなどの細胞死によるのか、細胞周期進行阻害によるのかをAnnexinⅤ染色やBrdU取り込み率や関連マーカー発現をWestern blotting assayで検証する。 また、DIF-1処理による細胞増殖抑制効果とMyc発現の因果関係を検証する。すなわち、MYC/MYCN増幅髄芽腫細胞のc-Myc/N-myc発現siRNAを用いてノックダウンし、DIF-1に対する感受性を検証する。 さらに。DIF-1によるc-Myc/N-myc発現抑制機序を検討するために、発現制御が転写レベルか翻訳レベルが翻訳後修飾レベルかを、qRT-PCRやWestern blottingを用いて検証する。 加えて、DIF-1処理によるMycの代表的な転写標的遺伝子の転写抑制効果を検証する。代表的な複数の転写標的遺伝子の転写活性をReporter assayを用いて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
in vitroの実験で予想以上の結果が得られたため、その詳細な検証に研究期間の多くを当てたためin vivoの物品購入が不要であった。また、コロナ禍もあり学会での成果発表が行えなかったため旅費等が消費できなかったためである。 次年度は初年度に得られた成果をもとに予定通りのin vivoの実験を行っていく方針である。検証の優先順位を変更したもので、全体の研究計画には変更の必要はない。 またコロナ禍による旅費の不要などは予期し得たものではなかった。
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