2021 Fiscal Year Research-status Report
ペリサイトに着目した脳梗塞超急性期の炎症惹起機構の解明
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21K16643
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
千代田 大尚 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 派遣研修生 (20886155)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペリサイト / 脳梗塞超急性期 / 炎症応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞後では、損傷した神経細胞から放出される損傷関連分子パターン群が、免疫性細胞の浸潤に伴う損傷領域の拡大を惹起させることが示唆されるものの、如何にして炎症反応が展開されるかの詳細は不明であった。 本研究課題は神経損傷において、迅速な炎症応答が予想される毛細血管を被覆する血管周皮細胞(ペリサイト)に着目し、脳梗塞後超急性期における脳ペリサイトの炎症応答が齎す損傷領域への影響を明らかにすることを目的としている。 今年度は野生型マウスに塞栓系を挿入により中大脳動脈を閉塞することで、一過的に脳虚血を誘導したMCAOモデルを用いて、脳組織で生じる炎症反応の可視化を試みた。 脳梗塞後超急性期においてに炎症反応が惹起されるのかを調べるために、免疫蛍光染色法を用いて、核移行により活性化が解る炎症調節因子のNF-κβを構成するp65の検出をおこなった。超急性期である脳梗塞数時間後において、反対側領域ではp65は検出されないのに対して、梗塞側領域においてp65が検出された。さらに、ペリサイトではp65の核移行が検出されることから、脳梗塞後急性期においてペリサイトでも炎症反応が生じる可能性が示唆された。 次に、NF-κβの活性化に伴いmRNAの転写量が上昇するサイトカイン群のIL-1βやTNF-αが、脳梗塞後超急性期で発現するかをRNAスコープ法により調べた。脳梗塞後超急性期から急性期にかけて、脳組織における梗塞側領域で顕著にサイトカイン群のmRNAが検出された。 以上の成果は、脳組織での炎症惹起因子群が可視化されたことから、脳梗塞後超急性期のどの時期から・どの領域で・どの細胞種より・どのような頻度でといった観点から、炎症反応を経過的に検証することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳梗塞後超急性期における脳組織での炎症反応の可視化に重点をおき、p65の免疫蛍光染色とサイトカイン群のRNAスコープによる検出を試みた結果、超急性期での梗塞巣においてp65とサイトカイン群の検出が可能となった。従って今年度の研究では、炎症反応の経時的な追跡実験をおこなう上で重要な研究基盤が形成でき、脳ペリサイトでの炎症反応の可視化といった今後の研究遂行の上で重要な結果が得られたため、概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
1)脳梗塞後のペリサイトでの炎症反応が生じる時期や領域、頻度などを明らかにするために、引き続き野生型マウスを用いて、脳梗塞後の超急性期から急性期にかけて(1, 2, 4, 6, 12, 24時間後)、ペリサイトでp65の核移行の頻度を調べるとともに、他の細胞種との炎症反応時期やその頻度の違いを明らかにする。 2)脳梗塞後の超急性期において、どの細胞からサイトカイン群が発現し始めるのかを調べるために、引き続きRNAスコープ法と免疫染色法の条件検討を実施する。さらに、抗体染色で検出が可能なサイトカイン群に関しては、新たに免疫染色法で解析を進める。 3)ペリサイト選択的NF-κB経路遮断マウスのノックダウン効率の計測方法を樹立後、その系統を用いてMCAO後の血管不安定化に対する影響、免疫系細胞の浸潤に対する影響、 障害領域に対する影響といった観点から、ペリサイトでの炎症反応がもつ病理学的意義を調べる。 4)次にペリサイトに発現する炎症惹起因子を同定するために、まず低酸素下でLPSまたは DAMPsであるHigh Mobility Group Box 1(HMGB1)刺激により(脳梗塞時の神経損傷を模倣)、 ペリサイトで発現が誘導されるNF-κB経路依存的な分子を同定する。 5)ペリサイト 特異的に蛍光標識可能なレポーターマウスを用いて、ペリサイトをFACSにより回収し、脳梗塞後の遺伝子発現変化を解析することで、ペリサイト に発現し炎症反応を促進させる候補分子を探索する。
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Causes of Carryover |
実験機器の購入を他の助成金を充てたため次年度使用額が生じた。次年度使用額はマウスの購入費や消耗品費に充てる予定である。
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