2021 Fiscal Year Research-status Report
抗肉腫ヒト人工T細胞療法に向けたTCR・抗原ペア網羅的解析プラットフォーム開発
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21K16659
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
村田 憲治 札幌医科大学, 医学部, 特任助教 (80722454)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 骨軟部肉腫 / 単細胞解析 / TCR・抗原ペア / 養子免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨軟部肉腫は若年者に多く発生する悪性度の高い希少がんであり、化学療法に反応しない進行期肉腫患者の予後は不良である。近年、「がん免疫療法」は飛躍的に進化し、手術療法、抗がん剤治療、放射線治療の3大治療に次ぐ第4の治療法として注目をされており、ステージ 4 のがん患者でも劇的回復を示す症例がみられる。肉腫に対しては、がん精巣抗原の一つである NY-ESO-1 を標的として、T 細胞受容体(TCR)遺伝子を導入した T 細胞(TCR-T 細胞)を用いた T 細胞輸注療法が末期滑膜肉腫の 50%以 上に部分効果を示すことも報告されている。しかしながら、他の難治性肉腫疾患に対する既存の免疫療法の奏効率はいまだ低く、さらに肉腫に発現する特異抗原とそれを認識するTCR遺伝子の報告は少ない。 本研究の目的は、骨軟部肉腫に対する効果的な遺伝子改変T細胞療法の実行化に向けて、肉腫浸潤Tリンパ球(TIL)由来の肉腫反応性TCRが認識する抗原を同定するための新たな解析プラットフォームを開発することである。 平滑筋肉腫2症例(LMS02、LMS07)の切除検体からTILを分離して10x Genomics社のChromium Controllerを用いて単細胞レベルでのTCRレパトアと遺伝子発現解析を行なった。いずれもTCRのクローナリティが高いT細胞が存在し、さらにそれらは活性化マーカーや疲弊マーカーの発現がやや高く、腫瘍を認識している可能性が高い細胞集団であった。CD8陽性で、PD-1陽性かつ4-1BB陽性のTCRをサブクローニングし、TCR-T細胞を作成した。このTCRを抗原探索のプローブとして用い、新たな肉腫抗原を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平滑筋肉腫2症例に対してシングルセル解析を行い、腫瘍反応性を示す可能性が高いTCRを選択しTCR-T細胞を作成することに成功している。末梢血リンパ球へのTCRの導入効率は30-50%を得られている。標的細胞は現在作成中で、TCRとの反応性を確認することができれば、新たな抗原を同定できる可能性があり、TCR・抗原ペアの解析プラットフォームを確立することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
自家腫瘍細胞株を樹立できなかったため、肉腫細胞からRNAを抽出してcDNAライブラリーを合成し、患者のHLAを過剰発現させた腫瘍細胞に遺伝子導入し標的細胞を作成する。TCR-T細胞と共培養して反応性を調べ、陽性反応が出れば、その後の抗原探索のステップへと進む予定である。
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