2023 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷後の2次損傷における炎症増幅因子IκBζの役割
Project/Area Number |
21K16663
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
白石 康幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (50646338)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | IκB-ζ / 脊髄損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
IκB-ζは、炎症刺激に伴い発現誘導される核内IκBファミリータンパク質であり、脊髄損傷(SCI)との関連は未だ解明されていない。我々はIκB-ζがSCI後の炎症に関与しており、IκB-ζ欠損によりSCI後の機能回復が促進されると推測して本研究を進めてきた。はじめに、野生型マウス(WT)を用いて、SCI後の脊髄内でIκB-ζが増加することを確認した。この増加は受傷後1日目で約4倍となっており、IκB-ζがSCI後の炎症に関与していることが示された。その後、凍結精子からIκB-ζコンディショナルノックアウトマウス(KO)を作成し、KOにおけるSCI後のIκB-ζの増加率を確認した。KOでは受傷後1日目で約2.7倍の増加であり、WTに比べて有意に低い結果であった。これは、今回使用しているKOは特定の臓器でのみ遺伝子が欠損しており、血球由来の細胞でのみIκB-ζが欠損しているためと考察した。また、SCI後の下肢運動機能は、受傷後14日目以降でKOで有意に良好な結果であった。この結果から、IκB-ζ欠損によりSCI後の運動機能回復が促進する可能性が示唆された。骨髄移植実験においても、KOの骨髄を移植した群で機能回復は有意に良好であった。In situ hybridyzationでは、IκB-ζは脊髄内のマクロファージ様細胞の核内に存在することが確認された。また、SCI後、KOでは脊髄中のIL-4、IL-10、GM-CSF、CCL-11など、抗炎症や組織修復に関与するサイトカインが有意に高い結果であり、血球由来のIκB-ζの欠損により、SCI後の反応は抗炎症・組織修復方向に変化することが示唆された。
|