2023 Fiscal Year Annual Research Report
mTOR阻害薬テムシロリムスによる椎間板変性に対する治療アプローチ
Project/Area Number |
21K16685
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
垣内 裕司 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (40849212)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オートファジー / 椎間板変性 / mTORC1阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々のグループは椎間板髄核細胞の生存、変性の予防にはオートファジーとそれを制御するmTORシグナル経路が重要な役割を担っていると考え、ヒト椎間板髄核細胞へのmTORC1阻害による細胞保護効果を報告した。細胞実験において、ヒト椎間板へのmTORC1阻害による保護効果を報告したが、ヒトへの臨床応用には動物実験が必要と考えられる。 本研究では臨床応用のためラット尾椎椎間板変性モデルを作成し、椎間板内へmTORC1阻害薬であるテムシロリムス、siRNAを投与した後に椎間板変性を惹起し、変性過程を観察して対照群と比較して椎間板変性度が抑制されるかを調べることとした。 今回ラットを用いた動物実験でsiRNA干渉椎間においてX線学的評価や組織学的評価にて椎間板変性進行抑止作用を示した。ウエスタンブロッティングや免疫染色の結果からはsiRNA干渉が、mTORC1を阻害することによりオートファジーの誘導や細胞死・細胞老化の抑制、細胞外基質分解抑制などを介して椎間板保護作用を生じる可能性が示唆された。mTORシグナル経路はタンパク質合成やオートファジーのみならず、炎症や糖代謝などその他のカスケードとも関わりがあるため、さらなる機構の解明が必要である。また、蛍光標識siRNAを用いた生体内RNA干渉は長期間確認できたが、陽性細胞率は経時的に減少していた。椎間板への薬剤投与は穿刺による直接投与が主流であるため、複数回の穿刺は椎間板損傷のリスクが懸念される。そのため一度の穿刺でより長期かつ高効率に薬剤を投与できる方法を開発することも必要と考えられた。その一つとしてナノ粒子ゲルをDrug delivery system(DHS)として応用した投与を現在研究中である。また、mTORC1阻害薬であるテムシロリムスを用いた同様の研究を進めて、siRNAと薬剤との効果の比較も必要である。
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