2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishing New Therapeutic Strategy for Urothelial Carcinoma
Project/Area Number |
21K16757
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荻原 広一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (30626677)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 抗癌剤耐性 / 癌幹細胞仮説 / 筋層非浸潤性膀胱癌 / 代謝リプログラミング |
Outline of Annual Research Achievements |
治療抵抗性を獲得した筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)には、膀胱温存を前提とする有効 な治療法がない。治療の過程で抵抗性を獲得し、進化する悪性度の高いサブクローンの克服戦略は近年の癌研究の喫緊の課題である。本研究は、癌細胞内に混在する癌幹細胞仮説に基づき、癌幹細胞が経時的に変化する過酷な環境下でも生存可能な代謝機構を備える性質を持つ点に注目した。 当教室で樹立した癌幹細胞モデルにメタボローム解析を加えることで癌幹細胞のみが含有する嫌気代謝を中心とした代謝リプログラミングの全貌を明らかにする事を目的とした。また本解析に加え、亢進した特定の代謝経路を制御する酵素群の発現を細胞レベルからヒト組織検体の免疫組織学的解析を加え、新規治療標的を同定する事とした。最後に当教室で独自に確立しているマウス同所性モデルを使用し、治療抵抗性膀胱癌に対する癌幹細胞を標的とした膀胱内注入療法の開発を目的とした。 当教室で過去に報告しているCDDP耐性膀胱癌株と膀胱癌野生株に対し、メタボローム解析を実施したところ、CDDP耐性株では野生株と比較し、taurin/hypotaurinをはじめとした抗酸化能の蓄積を示唆する代謝物質の蓄積を認めた。また、抗酸化能のサロゲートマーカーであるGSH/GSSGの上昇を認めている事から細胞内抗酸化機構の恒常的発現上昇を認める結果であった。術前化学療法を行ったヒト組織内、残存膀胱癌細胞においてもCD44v9や、CAⅨなどの抗酸化能を示す表面マーカーの発現上昇を認めていた。 以上の事から、膀胱癌幹細胞は抗酸化能の強い代謝機構を形成している事がわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当院でNMIBCに対し施行したTURBT後、BCG治療後に治療抵抗性と診断された78例を対象として、CD44v発現の有無とともに癌幹細胞の存在を確認した。すでに予備的検討でBCG治療抵抗性の膀胱癌検体にCD44v高発現群を認め、その予後は明らかに不良であることを確認している。 本研究では、ヒト膀胱癌細胞株において薬剤耐性株は野生株と比較してCD44v/xCT発現は亢進しており、薬剤投与に比例して細胞内グルタチオン濃度の上昇を認めるとともにROS産生を抑制していることを確認した。術前化学療法後の膀胱癌組織検体においてもこの現象は顕著であり、残存膀胱癌細胞表面にCD44v9をはじめとした幹細胞マーカーの発現は亢進している事がわかった。これとともに抗酸化能を示唆するCAⅨなどの分子マーカーも共発現しており、膀胱癌幹細胞が抗癌剤に抵抗性であることを示唆する結果であった。
これらのデータを踏まえ、CD44v発現が亢進しているマウス治療耐性株MBT2Vを用いて同様の結果を得られるかを検証する。特に癌幹細胞では、糖の取り込みを促進するグルコーストランスポーター(GLUT1)、糖をピルビン酸に変換するPKM2、そしてピルビン酸を乳酸に変換するLDHAなどの発現が亢進する事が知られており、それぞれRT-PCRとWBで確認する。これら解糖系酵素群は過去の報告によれば低酸素マーカーであるHif1-αが一律制御しているため、 仮にHif1-αの発現亢進が癌幹細胞の代謝リプログラミングを励起するmaster regulatorと仮定すれば、Hif1-αをknock downすれば代謝環境を治療感受性の状態に戻せると申請者らは考えている。Hif1-αの機能解析には、transfection試薬を用いてRNAをknock downさせ、一連の嫌気解糖系酵素群の発現が抑制されるかを検証する。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス由来の膀胱癌細胞であるMBT-2V細胞をC3H/HeNマウスの膀胱内へ移植する。この正所性モデルにHif1-α阻害剤およびBCGの膀胱内投与を行う。Hif1-α阻害剤には、過去の報告よりdigoxinを予定している。薬剤非投与群、digoxin投与群、BCG投与群、併用群と各群に5匹ずつ割り付ける。腫瘍移植後第5日目より3日毎に計5回投与する。Day30に安楽死させ、膀胱腫瘍の摘出を行い、腫瘍組織、腫瘍周辺組織、正常臓器における障害の程度、アポトーシス誘導の有無、血管新生阻害の状況などを免疫染色で確認し、抗腫瘍効果につき比較検討する。
|
Causes of Carryover |
研究は順調に遂行しており、年度末の金額調整の関係で次年度使用額が発生したと考えている。金額としては、引き続き次年度以降の研究に使用する消耗品費に充てる予定である。
|
Research Products
(4 results)