2022 Fiscal Year Research-status Report
子宮内膜癌における長鎖非コードRNA H19を介した発がんメカニズムの解明
Project/Area Number |
21K16762
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
金子 明夏 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10898414)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子宮内膜癌 / 長鎖非コードRNA H19 / アミノ酸トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
長鎖非コードRNA (lncRNA) H19は約 2300塩基から成る非コードRNAであり、子宮内膜癌では、H19の発現上昇が予後不良因子であると報告されている。しかしながら子宮内膜癌におけるH19の腫瘍原性分子メカニズムは明らかでない。そこで本研究では、子宮内膜癌細胞を用いて、H19ノックダウンが子宮内膜癌の増殖に及ぼす影響を検討することとした。 子宮内膜癌細胞(Ishikawa細胞、HEC1B細胞)にH19 siRNAをトランスフェクションしたところ、H19 mRNAの発現が75%低下したが、明らかな形態変化や増殖率の変化はみられなかった。 H19をノックダウンしたIshikawa細胞、HEC1B細胞のRNA-seq法による網羅的遺伝子発現解析を行い、H19の発現低下により発現が上昇あるいは低下している遺伝子群を網羅的に抽出した。PCDHACT、TXNDC5、MIR600HG、SLC16A1、HOXA10、SLC16A7など9つの遺伝子が抽出されたが、リアルタイムPCRではこれら遺伝子の発現変化はみられなかった。 そこで、子宮内膜癌細胞におけるアミノ酸トランスポーターの発現に着目することとした。細胞生存のためにはアミノ酸が必須であり、その取込みにトランスポーターが関与している。L型アミノ酸トランスポーターは各種悪性腫瘍で高発現することが知られているが、子宮内膜癌においては発現が低いことが著者らの事前実験により分かっていた。今回はシステムAアミノ酸トランスポーターに着目し、子宮内膜癌における発現プロファイルを解析することとした。 Ishikawa細胞とHEC1B細胞において、L型アミノ酸トランスポーター、システムAアミノ酸トランスポーターの発現量をリアルタイムPCRで確認した。発現が高かったSLC38A1、SLC38A2、SLC7A5、SLC1A5の遺伝子をそれぞれsiRNAでノックダウンしたところ、SLC38A2をノックダウンしたときに細胞増殖抑制効果がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大により、一般臨床での患者対応に多くの時間を割く必要が生じた。 これまでH19に着目して研究を行ったが、子宮内膜癌においてはH19のノックダウンにより細胞増殖、形態、遺伝子発現に変化が見られず、子宮内膜癌におけるアミノ酸トランスポーターの発現と機能解析を検討することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
SLC38A2をノックダウンしたときに細胞に起こる変化をリアルタイムPCRおよびウエスタンブロッティングで検証する。SLC38A2はグルタミン酸の輸送に関わっており、既報で細胞内に取り込まれたグルタミン酸によりmTOR 経路が活性化されることが報告されているため、SLC38A2とmTOR経路との関わりを探求していく予定である。 また、SLC38A2阻害薬により細胞増殖抑制効果がみられるか検討する。 さらに、子宮体癌手術検体の免疫染色を行い、SLC38A2の発現量と予後との関わりを検討する。
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Causes of Carryover |
実験の進捗が遅れたこと、および新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、情報収集目的に参加を計画していた学会に参加することができなかったことにより、次年度使用額が生じた。 次年度は、遅れている実験および、情報収集、論文作成を行っていく予定である。
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