2021 Fiscal Year Research-status Report
分葉状頸管腺過形成から子宮頸部胃型粘液性癌発癌過程の解明
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21K16787
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
井田 耕一 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (10773442)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子宮頸部胃型粘液性癌 / 最小偏倚腺癌 / 分葉状頸管腺過形成 / 全エクソーム解析 / 遺伝子変異解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸部胃型粘液性癌(GAS)、その超高分化型亜型である最小偏倚腺癌(MDA)は発症にヒトパピローマウイルス(HPV)感染が関与しない稀な特殊型の子宮頸がんであるが、HPVワクチンが普及した後には子宮頸がんの代表的な組織型となる可能性がある。MDA/GASは抗がん剤や放射線療法が効きにくく、深い間質浸潤や腹膜播種などの頻度が高く、予後不良で悪性度の高い癌であり、その性質を検討し治療法を開発することは急務である。MDA/GASの前駆病変として分葉状頸管腺過形成(LEGH)が注目されているが、その悪性化過程は明らかになっていない。これまでにGASの遺伝子変異をがん遺伝子パネルなどで検討した報告はあるが、同一症例内のLEGH部分とMDA/GAS部分の遺伝子変異解析を行った報告はない。我々は、これまでに1例に対し、新鮮凍結組織切片からLEGHとMDA/GASの各部分をそれぞれLaser microdissection (LM)で正確に採取し、全エクソーム解析を行った。LEGH部分に認められた病的遺伝子変異は一つのみであり、変異アレル率が約25%であったことから、本例のLEGH部分は化生ではなく既にmonoclonalな腫瘍性性質をもつ細胞集団であったと考えられた。また、隣接するMDA/GAS部分のも同遺伝子変異が同じ変異アレル率で共有されており、本例のLEGHはMDA/GASの前駆病変であったと考えられた。一方、MDA/GAS部分でLEGHから追加された病的遺伝子変異は一つのみであり、先の遺伝子と同遺伝子の別の塩基置換であった。MDA/GASの病的遺伝子変異は非常に少なく同変異のみで癌化したとは考えにくいことから、epigeneticな変化が大きく関与している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
稀な組織型であり、LEGH部分とMDA/GASを共に有する組織が採取できる率は非常に低い中、1例で解析が行え、有用な結果が得られた。また、現在、患者組織由来の培養細胞実験系を確立するべく順調に準備を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に実験計画通りに進める。MDA/GASの治療法開発が進まない理由として、培養細胞による実験系が現時点で存在しない点である。そこで我々はMDA/GASおよびLEGHの患者組織由来の培養細胞実験系の確立を目指しており、現時点で準備は整ってきている。
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