2022 Fiscal Year Research-status Report
分葉状頸管腺過形成から子宮頸部胃型粘液性癌発癌過程の解明
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21K16787
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
井田 耕一 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (10773442)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 患者由来オルガノイド / 子宮頸部胃型粘液性癌 / 腫瘍浸潤リンパ球 / Hippo-YAP/TAZシグナル伝達経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸部胃型粘液性癌(GAS)は発症にヒトパピローマウイルス(HPV)感染が関与しない稀な特殊型の子宮頸がんであるが、HPVワクチンが普及した後には子宮頸がんの代表的な組織型となる可能性がある。GASは抗がん剤や放射線療法が効きにくく、深い間質浸潤や腹膜播種などの頻度が高く、予後不良で悪性度の高い癌であり、その性質を検討し治療法を開発することは急務である。一方で、GASは細胞株などの実験モデルがなく、研究が進んでいない。そこで、GASの患者由来細胞実験モデルとして、オルガノイドの樹立を目指した。その結果、2022年度には2症例由来のオルガノイドが樹立できた。この過程で、GASでのオルガノイドの樹立を障害する要素も明らかになっており、今後は樹立効率の向上することが期待される。今後、各種実験に利用していく予定である。また、オルガノイドを利用したマウスでのオルガノイド由来異種移植腫瘍や、2次元培養系も樹立させるべく、検討を行っている。また、Hippo-YAP/TAZシグナル伝達経路に注目しており、これまでの検討ではHPV関連の通常型内頸部腺癌(UEA)ではYAP優位に核内に移行していたが、GASではTAZ優位に核内に移行していることが明らかになった。また、UAEとGASでの免疫チェックポイント分子発現や腫瘍内・腫瘍周囲リンパ球浸潤(TIL)の検討を行っているが、UEAと異なりPD-L1発現はGASでは殆ど認められていない。 本研究によりGASの実験モデルの樹立や、GASの特徴について明らかにできてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進めるうえで最難関と予想していた、患者由来実験モデルの樹立がオルガノイド培養法を利用することで、達成できた。このオルガノイドがGAS由来であり、患者のGASと同様の性質を示すことを明らかにするため、現在、検討を進めている。確認後はこの実験系を用い、現在、注目している分子標的について検討していく予定である。また、免疫チェックポイント分子や分子標的候補分子の発現についてもGASではUEAとの差異が観察されており、順調に成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に実験計画通りに進める。樹立したオルガノイドが原発のGASの性質を示すことを確認する。さらに今後は、同オルガノイド及びオルガノイド由来異種移植腫瘍を樹立し、各種治療薬への反応性を検討する。またGASの生物学的特性を明らかにするために検討を進める。なお、同オルガノイドはCAT-T療法など、新たな治療法の検討のための有力な研究ツールとなり得る。
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