2021 Fiscal Year Research-status Report
先天性トキソプラズマ感染症におけるペア型レセプターを介した免疫逃避機構の解明
Project/Area Number |
21K16791
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
内田 明子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (30866364)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 先天性トキソプラズマ感染症 / 免疫逃避 / TORCH症候群 / 母児感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
産婦人科医師として周産期医療に携わっており、日常診療でトキソプラズマIgM抗体陽性妊婦の紹介を引き受けている。1か月あたり5人程度と、その他の疾患に比して紹介数は多くはない。しかし、先天性トキソプラズマ感染症の研究を行っている施設が少なく、またトキソプラズマ抗体検査を行える検査会社との契約がない病院がほとんどであるため、当院へ紹介される、もしくは妊婦本人が希望して来院されることが多い。 妊娠中に実施可能な検査は限られており多くはないが、トキソプラズマIgG抗体(既往感染を示唆する抗体)、IgM抗体(初感染を示唆する抗体)、IgG avidityの測定、multiplex-nested PCR検査を用いた妊婦スクリーニングと、胎児感染予防の治療(スピラマイシンの内服)を行いながら、妊娠期間中は胎児エコーで胎児に異常がないか(胎児発育、肝腫大・脳内石灰化・水頭症の有無など)を超音波でフォローアップし、出生児の精査(血液検査、頭部CT、眼底検査など)、分娩時の胎盤病理検査、羊水PCRを行い最終的に感染が成立しているかどうかを診断していく。 診断と治療、フォローアップによって、天性トキソプラズマ感染の発生を抑制できることをコホート研究で明らかにした。毎年年度末にデーターをさらに追加して解析し、トキソプラズマ感染妊婦に行う検査、フォローアップ方法をまとめ、出生児の精査を行い、先天性感染を予防するためには妊娠中に初感染を行さないように啓蒙を行うことと、スピラマイシンを妊婦に内服させ、先天感染を起こさないようにすることを広く知ってもらえるように努力している。 去年まではCOVID19の影響で、研究室への出入りができなかったが、落ち着いてききたらトキソプラズマの免疫逃避機構を解明し、胎盤を通過してどのように先天性トキソプラズ感染症が発症するのかを解明していきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウイルスの世界的大流行により、日本国内では緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発令される状況であった。それにより、生活様式の変更を余儀なくされた。勤務する大学病院では、それら以上のさらなる厳格な対応が求められた。研究室への立ち入り制限、学会発表などの参加のための出張の禁止などがあげられる。研究材料や研究データーの収集、研究方法の相談など、普段学会の場などでディスカッションをする機会が奪われてしまい、思うように進行できていない。 また日常臨床が、コロナ対応をすることにより、さらなる人手を必要とするようになった。産婦人科医がもともと人数が少ないこともあり、産婦人科医ひとりずつへの負担が増大していった。コロナ妊婦の分娩、帝王切開、緊急搬送、コロナ陽性患者の緊急入院など、すべてフルPPE対応しなければならず、また治療方針も産婦人科だけで定めることはできなかった。病院内の感染症部門への確認、入院病床の確保、コロナ陽性の届け出、保健所とのやりとり、患者へのコロナの説明、家族への対応の説明など、普段以上に説明や手続きに時間をとられていた。またふなれな対応のため慣れるまで時間もかかり、感染状況により変化する病院の方針に、その都度対応せねばならず、思うように研究に時間を割くことができなかった。 コロナで変化したのは学会発表のありかたもである。まず最初はすべての学会がなくなり、少しずつ行われ始めたが、現地開催はなくweb開催のみで質疑応答もなく、ただ流れるスライドを見るのみというがスタイルが多かった。スライドを登録するだけのため、ブラッシュアップされることもなかった。以上により、2021年は研究に時間をさけず、なんの進捗もなく、コロナ対応に追われて過ぎ去ってしまった1年であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
COVID-19が落ち着いてきたら、まずは研究にむけての準備を整える。具体的には試薬や動物の購入からはじめていく必要がある。そして妊娠中にトキソプラズマIgM陽性となった妊婦の胎盤を収集していく。当院で分娩される場合は、胎盤の収集が容易となるが、里帰り分娩などで他院で分娩する場合は、胎盤を廃棄されてしまうことが多いため、まず研究への協力の依頼を患者本人だけでなく、主治医となる医師にも説明する必要がある。そうすることにより、少しでも多くの胎盤を収集することが可能となるであろう。 実際、ペア型レセプター免疫グロブリン融合蛋白の作成に時間がかかると考えられる。ここでつまずくとすべての研究プロセスの組み換えが必要になるかもしれない。そのためにはまず、細胞へのトランスフェクションする過程に精通している人に手技を学ぶのが最も早いと考える。産科婦人科の研究室にとどまらず、基礎研究室に所属されるすべての教室に依頼してこの過程をなんとしてもこなしていくのが大切である。 研究の手技に、免疫染色を用いるが、この手技もなかなか安定させるのが難しい。温度管理、特に試薬の管理が重要となる。試薬が古いとなかなか染色ができあがらない。経費に試薬の値段をしっかりと設定しているが、これで不足なく研究できるのかは未知である。また、試薬の温度管理は研究室の室温や冷蔵庫の温度管理も重要である。 私個人は、大学院では基礎研究ではなく臨床研究で学位論文を作成したため、基礎研究への知識が圧倒的に不足していると感じる部分が多い。そこを補充すべく、周りの研究者の助けを得ながら、試行錯誤して進めていくつもりである。学会発表に積極的に参加し同じような研究者との意見交換を積極的に行っていきたい。それにより自分の研究方法の長所や短所にきづかされ、ブラッシュアップしていくことが可能となると考える。
|
Causes of Carryover |
2021年度はCOVID19で研究をすることが全くできておらず、わずかではあるが開催された学会に参加するのみとなってしまった。有用な意見交換はできず、また、研究室への出入りが禁止されたため研究に大きな遅れを生じてしまった。外出や出勤さえもままならず、研究費に必要な物品をそろえることさえできなかった。それは必ずしも自分だけでなく、だれもが平等にCOVID-19による影響をうけていることは想像にたやすい。また、臨床医としての使命から感染対策や、感染者の治療や対応におわれてしまい、時間もなく、また自分自身が心休まる瞬間がなく、常に緊張事態を強いられており、研究テーマを考える余裕がなかったのも事実である。だが、そんな中でもトキソプラズマ初感染疑いで紹介となる妊婦を目の当たりにすると、トキソプラズマの免疫寛容についてどうしても気になってしまう。そのたびに研究をして結果をしりたい、また自分で結果が出せずとも、協力を得られれば時間がかかってでもこの研究を遂行してしまいという思いがかなり強くなった。去年の遅れをとりもどすべく、本年もまだ予断は許さない状況ではあるが、できる限り研究の準備を進めていきたい。そのため昨年使用予定であった分を本年請求している。
|
-
[Journal Article] Immunoglobulin fetal therapy and neonatal therapy with antiviral drugs improve neurological outcome of infants with symptomatic congenital cytomegalovirus infection2021
Author(s)
Tanimura K, Shi Y, Uchida A, Uenaka M, Imafuku H, Ikuta T, Fujioka K, Morioka I, Deguchi M, Minematsu T, Yamada H
-
Journal Title
Journal of Reproductive Immunology
Volume: 143
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
[Presentation] トキソプラズマ-IgG avidity index高値母体から発生した先天性トキソプラズマ感染疑いの1例2021
Author(s)
谷村 憲司, 内田 明子, 笹川 勇樹, 施 裕徳, 白川 得朗, 今福 仁美, 出口 雅士, 芦名 満理子, 藤岡 一路, 森岡 一朗, 笹井 美和, 山本 雅裕, 山田 秀人
Organizer
日本産婦人科感染症学会
-
-
-
-
-
-
-
-