2023 Fiscal Year Research-status Report
The role of 5-Hydroxymethylcytosine in oocyte and embryo
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21K16802
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
川原 泰 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究員 (10836985)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 卵子 / 加齢 / 遺伝子損傷 / 遺伝子修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
出生時にはおよそ200万個存在すると言われる卵母細胞は、卵巣組織の中で長い年数を過ごし、初潮を迎える頃にはおよそ20万個程度存在し、その後も毎月数百の卵母細胞が失われて行くと指摘されている。この間、大多数の卵母細胞は第一減数分裂の前期のまま減数分裂を停止し、原始卵胞として休眠状態にあるが、一部の卵子は成熟を開始し、周囲の細胞を巻き込んで、原始卵胞(primordial follicle)から一次卵胞(primary follicle)、二次卵胞(secondary follicle)、胞状卵胞(antral follicle)へと形態を変え、下垂体から放出されるホルモンなどの刺激によって減数分裂を再開し、排卵へと至る。私達の研究室においては、妊孕性温存療法の一つとして卵巣組織凍結・融解および移植法の確立に長年携わっており、特にガラス化凍結および融解が、卵胞の形態および遺伝子発現様式にどのような影響を当たれるかについて研究と解析を行って来た。不妊治療や妊孕性温存療法を成功させるには、卵子の数を確保すると共に、その遺伝子レベルでの質を担保することが極めて重要であり、卵子あるいは卵巣組織の凍結融解や化学療法の影響、あるいは加齢そのものがDNAにどのような損傷を与え得るのかが様々な方法で分析されてきた。一方で近年は、遺伝子発現のon/offを制御するメカニズムを解明しようとするEpigeneticsが急速に発展しており、卵子あるいは卵母細胞においても、染色体の本数や形態あるいはDNAの損傷のみならず、epigenetic controlの詳細な解析が、生殖細胞の初期化や配偶子の成熟、卵子の老化や消失のメカニズムとも密接に関わっていることが次第に明らかとなって来ている。こうした背景を踏まえて、今回の研究では、卵子の老化に伴ってどのようなEpigeneticsの変化が生じるのかを明らかにするべく、老化のマーカーとなり得るDNAおよびヒストンの修飾部位などの検索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
加齢卵子を特徴づけるマーカーとなり得る分子あるいはエピジェネティックな変化の候補として、DNA-methylationの一形態である5-Hydroxymethylcytosineに着目し、老化卵子および健常な卵子における、5-Hydroxymethylcytosineの割合を比較することを目標と考え、この検出方法の検討を行ったが、5-Hydroxymethylcytosineは不安定な構造であり、安定的なマーカーというより、一時的な分子間の情報伝達に関わっている可能性が高い事が、過去の研究結果の読解から次第に推測されるに至った。そのため、5-Hydroxymethylcytosineに変わる、加齢のマーカーとなる構造の検索を行っているが、個人的な複数の事情が重なり、動物実験などの継続的な介入が必要な研究を開始する目処が立たない状況が続いてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは最新の文献を再度網羅的に精査し、加齢卵子を特徴づけるマーカーとなり得る分子や構造の候補の絞り込みを行う必要がある。その上で、これらの候補となる構造を、どのようにしたら検出できるかを、情報を調べると共に、試行錯誤して確認していく必要がある。方法が確立されたら、実際に、若い卵子と加齢状態の卵子を、マウスなどを用いて用意し、解析結果を統計的に比較検討していくことが必要であると考えている。いずれにしても、まずは、十分な研究時間を確保出来る目処を立てることが第一である。
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Causes of Carryover |
2023年は支出を伴う実験などを行わなかった。そのため、直接経費は全額が持ち越しの状態となった。
加齢に伴って起きる染色体数異常は、二価染色体が一価染色体へ早期分離してしまうことが主要な原因として指摘されており、2024年の研究費の使用計画としては、染色分体の接合と分離を調節するcohesinの役割に着目し、このcohesinの役割を調整するメカニズムについて過去の報告を再検討し、加齢の影響を最小化する方法にいて考察と検証を行う。
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