2023 Fiscal Year Annual Research Report
卵子中の脂肪滴を管理することで、胚発生や出生後の発育までも変化させうる
Project/Area Number |
21K16809
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
辰巳 嵩征 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (30846035)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 受精卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床的アプローチとして、難治性不妊の原因のひとつの抗セントロメア抗体について研究した。抗セントロメア抗体をもつ女性の卵子は紡錘体のセントロメアへの付着を阻害し、染色体が正常にわかれることができないことから、前核が見かけ上複数個となる場合がある。しかし、前核が複数になる卵子とならない卵子があり、なぜそのように卵子ごとに異なる結果となるかはわかっていない。ここで受精卵の脂肪滴は、同時期に同卵巣から採取した卵子であってもそれぞれの分布が異なり、また量もそれぞれ多いものもあれば少ないものもある。ヒト卵子における抗体の分布も同様に卵子ごとに異なるのではないかと考え、抗体産生をおさえるようなアプローチにより、卵子の発生の改善を図った。 基礎的アプローチからは、オメガ3多価不飽和脂肪酸についての報告を行なった。妊娠から授乳までの期間にオメガ3脂肪酸を摂取することで、鶏卵やピーナッツへの食物アレルギーの発症リスク比を低下させる可能性が報告されている。また動物実験ではマウスにオメガ3脂肪酸を投与すると卵巣の老化が遅くなることから、卵子の質を改善させ高齢マウスの妊娠を可能にしたという報告もある。マウスに超短期間の高脂肪食を負荷することで、血液・卵胞液中の脂肪酸がギャップ結合を通じて卵子内部の脂肪滴を増加させることを報告したが、これらは直前の食事中の成分が今まで考えられていたよりもより早く、より大きく卵子そのものに反映されることを意味した。卵子を取り巻く環境という観点からも、直近の食事に含まれる脂肪酸が卵そのものに影響を与える可能性を考慮し、妊娠前からのオメガ3脂肪酸の摂取も有効な可能性がある。
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